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法律でひもとく介護事故

テーマ8 虐待

質問

 居宅サービス事業者から派遣されたホームヘルパーが担当しているFさんは、同じ敷地内の息子さん一家と暮らしています。相続の問題から親子間の関係がこじれ、ほとんど行き来はない状態ですが、時々夜中に息子がやってきて聞くに堪えない暴言を吐くといいます。ヘルパーが見ているわけではないのですが、Fさんがやせ細っていきます。このまま放置していいのでしょうか?

回答

 息子さんのFさんに対する行為は心理的な「虐待行為」といえます。
 高齢者虐待防止法(脚注1)では、「養護者による高齢者虐待行為」について、これを発見した者に対して、市町村等に対する通報義務(又は通報の努力義務)を定めています。
 息子さんがFさんを経済的に扶養しているような場合には、息子さんはFさんの「養護者」に該当します。
 したがって、仮にヘルパーさん自身が見ていないとしても、Fさんがやせ細っていくなどの事実により「虐待を受けたと思われる」(同法7条)場合には、市町村又は市町村の委託先の地域包括支援センターなどに通報しましょう。
 高齢者虐待防止法に基づく通報の場合には、仮に誤報であったとしても何も非難されません。また、通報をもって守秘義務違反とされることもありません。心理的な虐待がエスカレートして身体的虐待に発展するおそれもあります。早めに通報しましょう。
 これに対し、息子さんがFさんを日常生活においても、経済的にも手助けをしていない場合には、高齢者虐待防止法の「養護者」とはいえません。しかし、だからといって放置してよいものではありません。この場合でも市町村に相談し、事態の打開に努めましょう。

解説

1.高齢者虐待防止法って?

 高齢者虐待防止法は、「高齢者に対する虐待が深刻な状況にあり、高齢者の尊厳の保持にとって高齢者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等にかんがみ」高齢者保護とその養護者支援のための措置を定めて高齢者虐待の防止を図ることを目的として制定された法律です。
 同法は、①養護者による虐待防止措置、②養介護施設従事者等による虐待防止措置を規定しています。
 それぞれ、対象となっている「虐待行為」は以下の表のとおりです。

▼表は左右にスクロールできます。

養護者による 養護者以外の親族による 要介護施設従事者等による
①身体的虐待
→ 身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること
②放棄・放任
→ 高齢者を衰弱させるような著しい減食または長時間の放置
養護者以外の親族による①③④に挙げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ることを含む。
高齢者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ることを含む。
③心理的虐待
→ 著しい暴言または著しく拒絶的な対応その他の著しい心理的外傷を与える言動を行うこと
④性的虐待
→ わいせつな行為をすることまたはさせること
⑤経済的虐待
→ 高齢者の財産を不当に処分することその他高齢者から不当に財産上の利益を得ること

2.介護事業者の特別な義務

 上記の表にあるような虐待を受けているまたは虐待行為を受けていると思われる場合には、一般の人であっても通報義務(または通報努力義務)を負います。
 さらに、介護施設従事者に関しては、高齢者虐待防止法において、高齢者の虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、高齢者虐待の早期発見に努めるようにとの特別な努力義務が課されています(同法5条第1項)。
 通報が誤報であったとしても、何の非難も受けませんし、通報をもって守秘義務違反に問われることもありません。手遅れになる前に通報しましょう。

3.高齢者虐待防止法以外での対処法

 たとえば、高齢の妻が高齢の夫から「虐待」を受けているという場合には、DV防止法を適用することもできます。
 さらに、虐待が暴言にとどまらず、暴行等にまで発展してしまった場合や、こっそりお金を盗んだり、預かっていたお金を使ってしまった場合、養護者が高齢者を介護しようとしない場合には、それぞれ、暴行罪・傷害罪、窃盗罪・横領罪、保護責任者遺棄罪に該当し得ます。
 したがって、刑事手続きを利用して、虐待をする者の身柄拘束により、高齢者の安全を図ることも方法としては考えられます(脚注2)。
 また、経済的虐待などの場合には、成年後見の申立てを行い、成年後見人が財産を管理することで被害を防ぐこともできるでしょう。

脚注

  • 正式名称:高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律。
  • ただし、家族関係に遺恨を残す結果となりかねませんし、家庭内での事件であるという点で警察も及び腰になることもあります。さらに親族間の犯罪ということで刑が免除される場合もありますので、現実的には難しい対応といえるでしょう。

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