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4.多すぎる薬、気になったら薬剤師に相談

 日々の服薬する薬を減らすことを減薬といいます。複数の診療科にかかり、それぞれ必要な薬が処方されている訳ですから、一言で減薬と言っても簡単ではありません。

 ここでは、「かかりつけ薬剤師」と「老人保健施設(老健)」における減薬の取組みの事例を紹介します。

<事例1>
かかりつけ薬剤師による
減薬の取組み

患者背景

  • 高齢女性 家族と同居 薬は自己管理している
  • 1日の使用錠数が多く、以前から薬を減らしたいと思いながらなんとか服薬を続けている
  • 既往歴:
    眼底出血、脳梗塞、脊柱管狭窄症
  • 受診科:
    眼科、脳神経外科、整形外科の3科

<事例内容>

 ある日、突然ふらつき立ち上がれなくなり、脳梗塞が出たのかと思い家族が救急車をよび救急外来へ受診することに...検査の結果、脳梗塞ではなかったようで、めまいの治療薬が処方され、ご本人が処方箋を持って薬局にこられました。

 ふらついている状態であるにもかかわらず「めまいの薬は飲みたくない。以前から1種類でも薬を減らしたかったのに、増えるなら今までの薬は全部飲まない!」と、服薬拒否をされてしまいました。

 今までご自身で薬をしっかり管理できており、ご本人の希望もあってシートのままお薬をお渡ししていましたが、かかりつけ薬剤師は現状から判断し、服薬負担を少しでも軽減するためまずはすべての薬を一包化(※)することを提案しました。
 そして、使用している処方内容を検討しすぐに眼科、脳神経外科、整形外科へ直接電話し医師に患者さんの現状を伝え、優先順位の低い薬を中止する提案を行ないました。それぞれの医師も薬剤師による提案を受け入れてくれ、絶対に欠かせない必要な薬だけを残し、合計3種類の減薬に成功しました。
 減薬によりご本人も納得をして、しっかりと治療を続けられることができ、救急外来で処方されていためまいの薬は1ヵ月後には終了となりました。

 また、かかりつけ薬剤師は電話での減薬提案をしたあと、医師へ書面による服薬状況等にかかる情報提供を行なっていました。
 眼科の医師は次の診察のとき患者ご本人に「薬局から手紙がきていたので状況はよくわかりました。内服薬の処方はすべて中止し点眼薬だけで経過を見ましょう。」とお話をされ、最終的にさらに1種類減り合計4種類の減薬となりました。

 ご本人は、減薬後も体調の大きな変化はなく、今回のことでさらに医師・薬剤師との信頼関係を深め治療を継続されています。

対応方法

減薬前

  • 服用薬の種類と数:
    3科合計で10種類、錠数は1日18錠
  • 服用回数:
    1日3回 毎食後

減薬の結果

  • 服用薬の種類と数:
    3科合計で6種類、合計9錠
  • 服用回数:
    1日3回 毎食後(一包化(※))

※一包化:
朝・昼・夕など薬を飲む時間が同じ場合に、複数の薬をまとめて1袋にすること。
理解力や判断力が低下した人が薬をなくしたり、飲み間違えたりするリスクが減ります。手先が不自由になり、薬を一つずつ取り出す動作が難しくなった場合にも役に立つ方法です。

<事例2>
老人保健施設(老健)での
減薬の取組み

患者背景

  • 高齢女性 自宅から老健に入所
  • 既往歴:心疾患
  • 服薬:
    A薬(胃酸を抑える薬)、降圧剤等

<事例内容>

 老健では医師・看護師が常駐しています。薬剤師は100人規模の老健の場合は、週に2日ほど入所者の服薬状況や残薬の有無を確認したり薬の管理を行なっています。
 老健は医療提供施設であり、医師が常駐しているため、必要に応じて診察、投薬、注射などの医療サービスが受けられます。

 医師・薬剤師は、利用者が入所されるときに持参した薬とそれまでにかかっていた医師からの健康状態の報告書を確認し、使用する薬の変更や減薬を検討します。
 介護保険の仕組みでは、老健入所中に使用する医薬品の費用は介護報酬(老健の収入)の中に包括的に含まれています。このため、高額な薬の費用を介護報酬から捻出するのは難しく、ジェネリック医薬品や代替可能な安価な医薬品への切り替えも検討されます。

 ある老健の入所者は、報告書の既往歴から胃の状態には問題がないと思われましたが、胃の胃酸を抑える薬(A薬)を使用していました。
 この方は、過去に心臓の病気で薬を飲むことになり、その薬の胃への負担を緩和するためにA薬を併用していたのです。その後、心臓の病気での薬の治療は終了になったにもかかわらず、A薬だけが続いていたのです。

 現在の状況でA薬を飲み続ける必要性は疑問であり、またA薬にはアルツハイマー型認知症のリスク上昇についても報告があるため、服薬を中止することになりました。

 老健では看護師など医療従事者が見守っているため、減薬後の状態の変化をチェックしやすいというメリットがあり、中止したあとに胃の不調があるような場合はすぐに対応することが可能です。

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