4.実はご家族も当事者です 死の迎え方とおくり方
監修:川越 博美(訪問看護師/訪問看護パリアン看護部長)・髙本 眞左子(一般社団法人セルフケア・ネットワーク代表理事)
悲しい場面ですが知っておきましょう 看取りのときが近づいてきたら
人のからだには
さまざまな変化が現れます
手足がいつもより冷たく感じられたり、皮膚の色が紫色に変化します。
徐々に食べることができなくなります。
呼吸が不規則になり、「ゼロゼロ」という音に変わることがあります。
聞こえにくく、見えにくくなりますが、聴力は最後まで残ります。
ご家族、友人など支える人にも
できることがあります
愛情を込めて語りかけながら、そっとマッサージをしてあげてください。
無理に食べさせることは心身に負担をかけます。口のなかを潤わせるだけでもよいのです。
苦しそうに見えるかもしれませんが、慌てないでください。
好きな音楽を流したり、好みの香りを焚いてみてください。
在宅で看取りを経験した方の体験談
母の看取り経験の後悔

60代女性
父は最期のときを自宅で過ごしました。
20年前に病院で亡くなった母は、全身管だらけで、かろうじて医療機器の力で生かされていました。母の最期の姿と言葉は今でも忘れられない。"家に帰りたい"。たった一つの希望をかなえることができず、長い間後悔をしていました。
その経験があったので、父のときは、家族全員が母の最期のようなことだけはしたくないと思っていたのです。もちろん当事者の父も同じ思いでした。本人を含めた家族の決意は固かったのですが、そうは言っても当時の私たちには必要な知識や情報がなく、情報収集をするだけで疲弊してしまいました。
家族を中心としたチームケア

60代男性
幸い親切な訪問診療医と訪問看護師と出会うことができ、私たち家族が安心して父の看病ができるようにいろいろなことを教えてくれました。
大事なことは「何かあったらいつでも私たちに連絡してください。慌てて救急車を呼ばないでくださいね」ということでした。
最期のとき、父がどんな状況になるのかをしっかり説明してくれていたので、私たちは落ちついて対応することができました。駆けつけた弟の「お父さん!」という叫び声に大きくうなずき父は息を引き取りました。とても悲しかったですが、私たちは誰ひとりとして後悔がなかったのです。
父は亡くなる5日前に、後のことをすべて私たちに伝えてくれました。最期まで父親の役割を全うしたのかもしれません。
スイッチの切り替えが大切

70代女性
母が在宅介護の状態になったのは10年ほど前でした。完全に寝たきりになったのは2年半くらい。その間に私が3回も入院を繰り返してしまいました。
母は協力的でしたが、自分でからだを動かすことはできませんでした。
そんな状態のなかで在宅介護を続けられたのは、私がボランティア活動をしていたからだと思います。皆と会うことで気分転換になりました。
「からだはどう?」「お母さまの具合は?」「ご主人は?」と皆さんが尋ねてくれて、話すことで悩みのはけ口にもなっていました。
在宅介護の場合、どうしても閉じこもりがちになります。寄り添い、支えてくれる人がいることで頑張れます。それが、深呼吸する時間になるし、スイッチの切り替えになるのです。