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ケース1 認知症の親のため、慣れない家事やトイレ介助をする長男

退職後、長男が実家に戻り
母を介護中。不眠、妄想...
もう限界です。

慣れない介護で限界

登場人物

介護者 長男(Aさん)
介護される人 母(要介護4)

 仕事一筋だったAさん(①)(男性61歳)は、退職を機に、地方に住む母の介護を始めました。東京のマンションには妻を残し、Aさんひとりで実家に戻りました。

 はじめは母も喜び、またさほど認知症が進んでいなかったこともあり、Aさんに大きな負担はありませんでした。ところが、思った以上に認知症が早く進行し、母は家事も食事も自分ではままならないほどになってきました。Aさんは慣れないながらも家事や食事介助も頑張りました。

 母の認知症が進行し、不規則な睡眠・覚醒リズムが顕著になってくると、不眠が増え、妄想も出てきて、母からは目が離せなくなってきました。相談相手がいない(②)Aさんの負担は次第に増えていきました。

 また、Aさんもそうですが、母にとっても異性である(③)ことというのが、なかなか難しい問題でした。まずは母の買い物について何をどこで買っていいかわからず、つまずいたり失敗したりしました。着替えやトイレの介護は、とても気まずく、やってあげたいことも思うようにはできません。
 そんなときに母から「ごめんね」と言われると、そうじゃないんだよと心のなかで思いつつ、悔しいやら悲しいやらのなんともいえない複雑な感情が出てきて、つい怒鳴ってしまうことも増えてきました。介護サービスは利用していますが、「母の介護は自分の責任」との気負いもあり、やはり自分で抱え込んでしまいます。

どこに問題があるのか、
一緒に考えてみましょう!

 Aさんの母の介護の場合の難しさには、介護負担の増加はもちろんですが、さらに異性介護の難しさがあります。

 加えて、Aさんの負担を増しているのは、環境の変化です。仕事一筋であったところから、退職しての介護という変化、東京のマンション住まいから実家住まいへの変化、さらにこれまでやってこなかった家事をするという変化もあります。

 さらに、昭和世代の男性にありがちかもしれないのが、人に相談することや頼ることへの、要領の悪さです。人の力を借りる、利用することへの要領の悪さといってもいいかもしれません。このため負担は抱え込みがちとなり、介護がうまくいかなくなってしまうことがあります。

①仕事一筋だったAさんの環境の
大きな変化

変化はストレス。
適応にはエネルギーを使う

 環境の変化はストレス要因となり、新たな環境への適応にはいつも以上に心身のエネルギーを使います。環境変化への適応の過程で心身の疲労等を重ね過ぎたことが主な原因となり、心の不調となり表れる疾患の一つに適応障害があります。さらにうつ病(気分障害)となって表れることもあります。

年齢を重ねると、新たな環境への
適応は難しくなりがち

 若いうちはエネルギーや柔軟性が比較的あり、変化への適応がしやすい面があります。
 一方、年齢を重ねるとエネルギーも落ちていきますが、柔軟性も少なくなっていくことが多い傾向にあります。年齢を重ねた分だけしっかりと身につけてきていることも多くあり、これまでのやり方を変えたりすることも難しくなることがあるためです。

②責任をひとりで背負い込む性格

責任をひとりで背負い込む

責任を自分だけで背負い過ぎない

 社会人として長年勤めあげてきた方は、自己責任意識がしっかりと身についていることも多いでしょう。このためともすると、実家母の介護は自分だけで背負わなければならないと考えることもあるでしょう。
 しかし、ここは度が過ぎないように注意が必要で、自分だけで責任を負い過ぎないようにすることが大切です。

相談は上手に使い、協力を得る

 人によりますが、日本人男性は自己責任意識が強い傾向もあり、また昭和世代の男性はさらに弱音を吐いたり、相談したりするのを要領よくできない傾向もあるようです。そこには、相談は頭を下げるもの、自分が無能であることを周りに晒すものといった考えも根深くあるようです。

 介護においては、少しだけ頭を切り替えて、相談はさまざまな人の協力を得て、母のために最善を尽くすこと、などと考える方が得策です。自分ひとりで対応するのではなく、さまざまな人に相談し、協力を得て進めていきましょう。
 相談を上手に使うことで、介護で自分が疲弊し過ぎていくのを防いでいくことが必要です。

③異性介護の難しさ

息子が母の介護をするときの注意点

 異性介護は難しい点がありますが、特に男性は母親の排泄介助や入浴介助には抵抗感があることが多く、母も羞恥心からできれば息子には頼みたくないと考えています。年齢にかかわらず性の尊厳があり、何よりも尊重すべきところです。
 母親ができないことだけサポートする、本人の希望をよく聞き訪問介護サービスでプロに頼むなど工夫すべき方法はあります。母はもちろん、ケアマネジャーなど介護の専門家とよく相談して進めてください。

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