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ケース3 介護をめぐって妻と関係が悪化

母と性格が合わず、妻が介護拒否。
妻との関係悪化。
息子である自分が介護していますが
施設入居も考えています。

母と妻の関係が悪化

登場人物

介護者 長男(Cさん)
介護される人 母(要介護2)
そのほかの
家族
Cさんの妻、
Cさんの長男(翔太)

 Cさん(40代男性)は母を自宅介護しています。妻と息子(中2)の4人で三世代同居中です。要介護2の母は、訪問介護やデイサービスも利用していますが、家で介護しているのはほぼCさんです。Cさんは会社員でフルタイム勤務しており、介護と仕事の両立に大変苦労しています。

 母は、手すりや杖を使ってゆっくりとであれば歩行可能ですが、トイレ・調理・入浴など自力では危なっかしく、目を離せないことも増えてきています。元々母は物を捨てられない性格でしたが、対して妻はきれい好きであるなど相容れないところがあります。母と妻は、ちょっとしたことでぶつかったりしていましたが、現在はお互い衝突しないようにとほとんど口もきいていない状態です。
 妻は次第に自力困難になっている母の施設介護を希望しています。対して母は在宅介護希望で、長年住み慣れている自宅から離れたくはありません(①)(②)

 先日、Cさんが仕事から帰ってきたところ、妻がとても怖い顔つきで「もうお母さんダメ!私はこの家ではやっていけない、だから施設に行った方がいいって言っているの!」と怒りをぶつけてきました。聞くと、トイレに間に合わなかった母がトイレを汚してしまい、それを妻が指摘すると、母は逆切れし日ごろの不満が爆発したように、妻に罵詈雑言を浴びせてきたようです。
 Cさんが母に聞きにいくと、母は「あんな嫁ならいらない、お前も同じだ、ふたりとも出てけ!翔太(息子の名前)だけでいい!(③)」などと言ってきました。母が杖でCさんを追い払おうとしたのを止めようとしたところ、間違ってCさんは母の手を叩いてしまいました。

 次第に弱っていく母を見るのはCさんにとってつらいところでもあります。妻につらい思いをさせていることもあり、施設介護がいいのかとも考えはじめています。

どこに問題があるのか、
一緒に考えてみましょう!

 今となってはあまり多くはない三世代同居です。人間関係は一筋縄ではいかないところもあり、特に嫁姑関係は難しく、一緒に住んでいるからこその衝突もあるでしょう。

 自宅介護か施設介護かの選択やタイミングも、介護においては頭を悩ますところです。家族それぞれの考えの違いもありますが、介護される親の気持ちの整理も難しいところです。

 三世代同居では、いくつもの人間関係が交錯していて、一方を立てれば他方が立たずということもあります。このケースの場合でいうと、母息子関係を優先すると、夫婦関係不和の危機が来てしまうこともあります。しかしながら、複雑な人間関係には、複数の人がいるからこその良さもあります。この事例でいうと、Cさんの息子であるお孫さんが家族関係のムードメーカーやチェンジメーカーになる可能性もあります。

①妻は施設入所希望、
母は自宅介護希望 どうする?

要介護者の安全確保と
介護者の負担軽減

 介護において優先して考えるべきは、第一に要介護者が安全に事故なく生活を送ることができることであり、第二に介護者に過度の負担がかからないようにすることです。この二つを考慮していくと、要介護度が増すにつれ、自宅介護か施設介護かの選択に迷い、悩みます。

自宅介護か、施設介護か

 要介護者の安全な生活と、介護者の過度な負担を防ぐよう考えていくと、施設介護を選択しようと思いがちですが、子が親の施設探しを決断するタイミングはいくつかあります。

子が親の施設探しを決断する
タイミング例

  • ①親がひとりでトイレに行けなくなったとき
  • ②親が火の始末をできなくなったとき
  • ③親が食事をとらなくなったとき
  • ④介護者までが倒れそうになったとき
  • ⑤「要介護4」となったとき

 この決断には要介護者と介護者、そしてその家族との話し合いや合意が必要であり、容易なことではありません。介護者や家族としては、できうる限りは要介護者の希望を叶えたいと願うところでしょう。ケアマネジャーと相談したり、いくつかの施設を見学するなどして、それぞれの条件のなかで、お互いが納得できる選択をしていきましょう。

②状況や課題を違う見方で
考えてみる

Cさんにはほかに
選択肢はないのでしょうか

 ①では自宅介護と施設介護について悩んでいる場合の考え方について説明しました。

 この事例の場合、そのどちらかの選択しかないのでしょうか。状況や課題を違う見方でとらえ、考えてみることで、新たな解決方法が見いだせる場合があります。

 Cさんは「妻は母の介護に積極的になってくれず、最近は口もほとんどきかなくなっている。母親ともっとうまくやってほしい」と思っていますが、はたしてそうでしょうか。この見方を変えてみましょう。

 「現在の親の介護は実子がするケースが多くなっていて、嫁が介護する時代ではなくなってきている。そもそも三世代同居の家庭自体が減ってきているのに、同居を了承してくれたということだけでも妻に感謝して良いくらいだ。自分が嫁姑の間をうまく仲立ちできなかったことにも原因があり、同居を続けること自体が難しいのではないか」とは考えられないでしょうか。
 妻に対する感謝の気持ちは、夫婦関係を強固にする土台にもなります。Cさんは母親の「自分は自宅にいたい」と妻の「お義母さんには介護施設に入ってもらいたい」という、対立している母親と妻の考えのどちらかをとるしかないと考えていますが、はたしてそうでしょうか。この見方を変えてみましょう。

 「妻は母親に施設に行って欲しいと言うが、自分たち家族が別に家を借りて出ていくことも考えるべきではないか。母親が自宅にいたいのであれば、必要な介護サービスを利用してひとりで暮らしてもらい(※)、時々、自分が様子を見に行くことにしよう」ということも考えてみてはどうでしょうか。

 困難な状況に直面すると、心の余裕やエネルギーが不足し、人は視野が狭まってしまい、ものごとを柔軟に考えられなくなってしまいます。あえて別の見方をしてみることで、新たな解決方法が見いだせることがあります。ほかに、利害関係のない第三者に相談して、率直な意見を聞いてみることも、別の見方をしたり、新たな解決方法を見出すいいきっかけにもなるでしょう。

※母親の介護状態(要介護2)では、介護サービスを使ってひとり暮らしをしている人も多く、不可能なことではない。

③孫さえいれば、という祖母の思い

孫と食事

孫の手を借りる、猫の手も借りる

 Cさんの母である祖母にとっても翔太くんは大のお気に入りであり、心のオアシスでもあります。翔太君もおばあちゃん思いかもしれません。できることは限られていますが、母と祖母との難しい関係においては、緩衝材になったりすることができるでしょう。

 介護の世界でよく言われることの一つが「孫の手を借りる」です。
 このケースとは違いますが、「家にこもりがちになっていた親を心配して、子どもが外出やデイサービスの利用を勧めても本人は聞き入れようとしない。ところが、孫が散歩に行こうと誘うと、一緒に散歩に行った」という例のように、子どもが言っても親は納得せず、反発するところ、孫が言うと納得し、行動してくれるということがあります。

 なお、人に限らず、その力を借りたいものはほかにもあります。ペット好きであるならば、犬や猫が与えてくれる力にも大きなものがあります。余計な言葉を話さない犬や猫から癒しのエネルギーを得ている方も多くいます。高齢者と動物がふれあう活動(アニマルセラピー)をしているデイサービスや介護施設もあります。

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