MY介護の広場トップ >  一般のみなさま >  介護の知恵袋 >  あなたは大丈夫?介護うつになる前に~在宅介護の悩み、一緒に考えませんか?~ >  ケース2 兄姉がいるのに父の介護は私まかせ

ケース2 兄姉がいるのに父の介護は私まかせ

もともと仲が良いとは言えない
4人きょうだいですが、
父の介護は私まかせ。
口だけ出してきます。

介護は私にまかせ、口だけ出してくる

登場人物

介護者 次女(Bさん)
介護される人 父(要介護3)
そのほかの
家族
Bさんの姉、
Bさんの兄ふたり

 Bさん(50代女性)は4人きょうだいの末っ子です。現在、ひとり暮らしの父がおり、脳卒中で片麻痺が残っていますが、施設介護を拒否しているため、自宅で介護をしています。Bさんは末っ子で父が可愛がっていたこともありますが、父の介護は主にBさんが担っています。

 もともと仲が良いとは言えない4人きょうだいは、父が倒れるまで疎遠な状態(①)でした。そういったこともあってか、Bさんは、きょうだいに介護を手伝って欲しい、経済的な援助もお願いしたいと思っていますが、仕事や子育てに忙しそうなきょうだいに遠慮して、はっきり言えていません。

 現在の父は、Bさんを可愛がってくれていたころの父とは違い、人格が変わったように怒りっぽい父となってしまっていて、Bさんは辟易してきてしまっています。

 Bさんには夫がいますが、夫にとっては義父となるため、手伝ってもらいたくてもBさんは遠慮してしまい、助けを求めることはしていません。

 ここ最近は、兄ふたりの厚意のあらわれかとも思うものの、それぞれがケアマネジャーに連絡し、勝手なことを言います。ケアマネジャーからは「キーパーソン(中心となって介護の方針などを決める介護者)の方が責任をもって家族の意見をまとめてください」と言われてしまいます。
 おまけに兄たちは、「もっとお風呂に入れてやれ」「食事に工夫しろ」などと正義ぶるというか、口だけは出すものの、結局それをするのはBさんだけです(②)。Bさんは今はもうイライラを通り越して、心が麻痺したように無表情になり、元気がなくなってきています(③)

どこに問題があるのか、
一緒に考えてみましょう!

 介護が一筋縄ではいかない要因の一つに、親を支える周りの家族の連携の困難さがあります。絵にかいたような仲のよい家族というのは実際にはなかなかいないため、多くの家で大なり小なりの問題が起きています。

 父に必要な介護のコーディネートをケアマネジャーがしてくれるように、父を支える周りの家族のコーディネートをどなたかが上手にしてくれるとうまくいくのですが...。

 このままBさんひとりだけに負担が集中すると、BさんやBさんのご家族に問題が起こりかねません。

①親が元気なうちの話し合いと
普段の関係性

今からできることを考えよう

 理想としては、親が要介護となる前に家族・きょうだいで、大まかなところでも話し合っておくことです。話し合うまでいかなくても、話題に少し出すだけでも、心の準備ができますので違うと思います。また、それぞれの家庭事情もあるかと思いますので、盆正月や冠婚葬祭など会った際に、お互いの近況共有などがあるのもよいかと思います。
 今はあまりないかもしれませんが、お年玉や新入学祝いなど、多少なりともやりとりがあると、いざというときの話し合いもしやすくなることと思います。今更ですが、これを機に関係性を見直す機会としてはいかがでしょうか。

②自分だけがガマンして
抱え込んでいる

声に出して相談する

ダメ、できない、忙しい、ばかりでは
うまくいかない

 あらかじめの準備が必要とわかっていても、実際にはそれぞれに家庭や仕事の優先事項がたくさんあるため、要介護となってからどうしよう?となることが多いものです。
 そのような時、うまくいかない典型的なパターンは、本事例のように「私はだめ、忙しい、できない」を主張し合うことです。こうなると、家族やきょうだいのなかで、遠慮しがちな人や断れない人に負担が集中してしまいます。そしてBさんのように、介護を担う人だけが疲弊していってしまいます。

困っていることを声に出して相談する

 それを防ぐためには、互いの歩み寄りが必要です。
 そのためには、困っているBさんには酷に思えるかもしれませんが、困っているBさん自身が、困っていることを声に出していきましょう。というのも、兄姉や夫はBさんがどれだけ大変で困っているかをよく知らないと思われるからです。

 困っていることを相談するというのは、文句やクレームを言うことではありません。比較的話しやすい方や話しやすいところからがよいですが、例えば夫に「兄姉は忙しかったり、介護だったりで手伝える状況に無いようで...。でも私ひとりだと限界があって、どうしたらいいのかな?いま行き詰まってて」などとつぶやくように相談してみましょう。
 直接話しにくい場合には、まずはスマホのメッセージなどでもよいでしょう。もちろん夫に弱音を言えたり、愚痴やSOSを言える関係性であるならば、「もうヤダ!」とか「助けて!」などと直接的に言うのもよいでしょう。

 Bさんが困っていることを伝えることは、状況打開のための大きな一歩となります。

③ひとりだけでの介護は
限界がきている

きょうだいそれぞれができることに
目を向けてみよう

 その後きょうだいでどう話し合うかですが、ここでの話し合いのコツは、できることを出し合うことです。できることを出し合うことを協力といいますが、少しずつでも協力を積み重ねることが重要であり、そうやって協力関係ができていきます。

 事例で言うと、長兄は「仕事が忙しいけど、ケアマネジャーに電話するくらいはできるから、俺が連絡窓口役になる」となり、次兄は「月に1回くらいなら有休取れるから、父の通院介護は力仕事だから、俺がいくよ」となったり、姉は「義母介護で家をあけられないんだけど、父が怒ったら私が電話して父を叱ってやるくらいならできるわ」など、このようにできることに目を向けると、実はできることは意外と見つかるものです。

 Bさんにとって最も心強いのは、兄姉の協力的な姿勢です。Bさんは心強い協力者となった兄姉から見えないエネルギーを得て、元気を取り戻すに違いありません。

MY介護の広場トップ >  一般のみなさま >  介護の知恵袋 >  あなたは大丈夫?介護うつになる前に~在宅介護の悩み、一緒に考えませんか?~ >  ケース2 兄姉がいるのに父の介護は私まかせ