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ケース5 ひとり娘で誰にも頼れず両親の介護

両親が相次いで介護状態に。
ひとり娘なので
覚悟はしていましたが、
更年期障害と重なり体調が悪く、
自分がどうにかなってしまいそう。

誰にも頼れず両親の介護

登場人物

介護者 長女(Eさん)
介護される人 母(要介護2)
父(要介護2)

 ひとり娘のEさん(43歳)は、両親が40歳間近にやっと授かった子どもであり、とても可愛がられて育ちました。Eさんには息子がいますが、息子が小さいときに離婚し、二世帯住宅で両親と同居しています。父は要介護でしたが、母がまだ元気であり父の介護は母に任せていました。母が息子の面倒も見てくれるとあって、Eさんはフルタイムで激務をこなしていました。

 そんなおり、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)や動悸があり病院を受診すると、少し早いかもしれないと思われましたが、医師からは更年期障害ではないかと言われました。しかしながら、仕事もあり通院はおろそかになってしまっていました。そんな矢先でしたが、母がこれまでの疲労が蓄積したのか要介護状態となり、Eさんが両親の介護を面倒見なければならなくなりました。

 両親の介護の面倒をみるようになってわかったことは、穏やかであった父が豹変し、母に手を上げることもあり、喧嘩も頻繁になっていたことです。

 子育て、更年期障害、両親の介護と両親の喧嘩、こういった大変な状況のなか、Eさんはみるみる顔色が悪くなり、食欲がなくなり、睡眠も十分にとれなくなり、すべてが嫌になり死んでしまいたいと思うほど(①)になっていました。周囲を見回すと介護中の人はいますが、私ほど大変そうに見えません。
 ケアマネジャーには自身の体調のことまでは相談できていません。友人に話すと、「皆が通る道よ」と言われ、話すのも面倒になってきました(②)せめてゆっくり眠れれば、と願っています(③)

どこに問題があるのか、
一緒に考えてみましょう!

 Eさんの負担が大きくなったのは間違いありませんが、離婚して実家で、母のサポートがある中で仕事も子育てもこなしていたEさんにとっては、母も要介護となり、頼るべき大きな柱に頼れなくなってしまったことがとても大きな痛手でした。さらには両親の喧嘩といういたたまれないストレスも重なっています。
 加えて、仕事も子育てもと懸命に行なってきたEさんには、心を開いて相談できる人が周囲にいませんでした。

 これまで頑張ってきたEさんには、休息はもちろん、ストレス解消や気分転換も必要そうですし、食欲や睡眠の不調・希死念慮(死にたいと願うこと)も考慮すると介護うつの可能性も考えられます。

①ひとりで、高齢者ふたりを介護し、追いつめられている

介護者の健康を土台に

 介護は、介護をする介護者自身の健康が土台にあってこそ成り立つもの。介護者自身の健康を第一にしていきましょう。

このケースの場合、介護者の健康のために配慮を要すると思われる点がいくつかあります

  • ①ひとり娘であり、また子どもを抱えての離婚(母子家庭)であり、さらに更年期障害も重なっていて、
    心身へ負担が大きくなっている。実際、食欲もなくなり、希死念慮も明確にある
  • 現在、食欲もなくなり、希死念慮も明確にあるため、もしかすると、更年期障害に加えうつ状態となっている可能性が考えられます。

  • ②両親ともに相次いで介護状態となっているため、ひとり娘に負担がさらに集中
  • 両親ともに介護状態というのは、ひとり娘への負担にさらに拍車をかけています。

  • ③両親のケンカが絶えない
  • 両親のケンカですが、これは子が目のあたりにすることはかなりの精神的ダメージとなりえます。

  • ④相談する人が周囲にいない
  • 女性は男性に比べ、おしゃべりでストレスを解消するのが上手な傾向にあります。
    逆にいうと、相談する人が周囲にいないという状況は、女性にとって特に負担が増すことが想像できます。

早めの医療機関受診

 Eさんの状態は、時間が解決したり、カウンセリングなどの相談だけで解決できる状態ではないかもしれないため、こじらせないためにも早めに医師に診てもらっておくのが必要であると思います。心の病かどうかを診てくれるのは精神科や心療内科となりますが、Eさんの場合には更年期障害で受診したことがある病院の医師にまずは相談してみるのもよいでしょう。
 医師に食欲や希死念慮のことを含め現在の健康状態をお伝えし、よく診ていただき、介護できる健康状態にあるかどうかをしっかりと確認しましょう。医師の見立てや処方・アドバイスを踏まえたうえで、ご自身の健康を守りつつ、介護をどうしたらよいかを検討していきましょう。

②周囲に話を聞いてくれる人が
いない

追いつめられている

介護のプロへの相談

 介護は家族だけで負担できるものではないため、社会で支えていこうという仕組みが介護保険制度です。この社会制度は最大限活用していきましょう。
 ちょっとしたことからなんでも相談できますので、最寄りの地域包括支援センターに相談しましょう。介護ではケアマネジャーが家族からの相談を受け、介護制度を最大限活用していくためのコーディネートをしてくれます。
 ケアマネジャーは介護のプロであり、また相談やコーディネートが大きな役割ですので、気兼ねなくなんでも相談していきましょう。

ゆるやかなつながりと情報交換

 介護のプロがいることはとても心強いものですが、さらにあると心の負担が軽くなるのが、大変な状況を共有したり、共感できる人たちとのちょっとした交流です。
 それはどんなつながりでもよく、友人・知人、あるいは親類でももちろんいいですし、会社の上司や同僚でも、取引先の方でも、はたまた幼なじみのしばらく会っていなかった友達でもよいでしょう。最近はネットでのつながりも普通になっていますので、SNSなどでのつながりも探せるでしょう。

 もちろん、介護の受け止め方は人それぞれです。それでも、こちらが介護の大変さや愚痴をこぼしたときに、「大変だね」「もうイヤになっちゃうよね」「わかるわかる」などと、話をよく理解してくれ、受けとめてくれるつながりがあると、自然とこちらの表情がゆるみ、肩の荷が降りる思いがするでしょう。
 また、そういったつながりのなかからは、介護経験者ならではのちょっとしたコツや役立つ情報も得られることもあるでしょう。

③介護から離れる時間がない

介護から離れられるひとときも

 ゆるやかなつながりもそうですが、さらに介護と無関係なところに離れられる時間もあるとよいでしょう。癒しの時間や、介護を忘れられる楽しいひとときを過ごせるとよいでしょう。

 もう疲れてヘトヘトである場合には、休息日をあえてスケジュールに入れて、ダラダラ、ぼーっとする日を過ごすのもよいでしょう。ちょっと豪華に、サービスの行き届いたレストランなどで至れりつくせりの食事をとって、お姫様気分でゆったりと過ごすのもよいでしょう。
 ムシャクシャしたりイライラしたりというときは、ちょっと遠出をしてみたり、運動をして身体を動かしてみたり、あるいは美味しいスイーツを食べるのもよいかもしれません。

 安心して介護から離れられるよう、介護サービスを利用しデイサービスやショートステイなどで自分の時間を捻出することも可能です。そういったことがよい気分転換やリフレッシュとなることはとても大切なことであり、両親の介護にもよい影響が出てくることと思います。

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