5.再発防止策の従事者へのフィードバック(2/3)
ポイント2
双方向のコミュニケーション機会が重要
双方向のコミュニケーションを図るうえで、具体的には以下のようなやり方が想定されます。
例えば、マニュアルをひと通り解説した後、グループワーク(以下GW)を行ないます。そのなかで、各自の体験のなかから「兆候」と思われるケースをあげて、「この場合に自分はどうすべきなのか」をマニュアルに沿いながらグループ内で発表させます。
問題は、GWに参加する従事者のなかに、ハラスメントケースにおける「相談のしにくさ」と同じ心理状況が生じやすいことです。
その状況とは、「自分の対応が悪いから、相手の言葉使いが荒くなったのではないか」とか、利用者が認知症であれば「自分のケアがまずいからではないか」というようなものです。
また、「兆候」というレベルだと、「それは思い過ごし」とか「自意識過剰」と指摘されてしまうかもしれない――こうした周囲の評価を本人はとても気にします。
特に若い従事者の場合、「他者が自分をどう見ているか」について敏感です。主催側(ハラスメント対応の委員会など)としては、こうした心理に配慮しないと研修の効果をあげられません。
そこで必要なのが、GWを始める前に、以下の目的をきちんと表明することです。
それは、
- ①マニュアルは完成形ではなく委員会として「見落としているケース」もまだあるはずで、GWはそのリサーチ機会でもあること
- ②従事者が「嫌な思い」をする状況がある場合、理由にかかわらず、それは法人として解決しなければならないこと
です。
これにより、どのような発言も「組織にとって必要なもの」という基準を明らかにします。そのうえで、以下のようなルールも設定しておきます。
- ①GWでの発言を承認はしても批判してはならないこと
- ②利用者等の具体的な言動に焦点を当てるのであって、「この人はこうだから」といった偏見につながる人物批評はしないこと
などです。
双方向のコミュニケーションを
活かした研修の進め方(その1)
かかる研修タイミング
- マニュアルを新規作成
- 新たな事例発生によるマニュアルの見直し
- 重大な事例(従事者がケガで休職に至ったなど)の発生(※)
※マニュアル見直しの前に「既存のマニュアル」の再徹底を目的として実施
マニュアル内容を説明
ついての質疑応答
その趣旨を説明
以下の点を明確に
従事者が嫌な思いをする状況は、どんな理由があれ法人として解決しなければならない。「見落とし」を探るのは、そのためである
趣旨
- 従事者個人の現場体験を発表してもらい、実際にマニュアルに落とし込みながら理解を深めてもらう
- マニュアルは完成形ではなく、見落しケースもある。その「見落とし」を探るリサーチ機会でもある
※どうしても話しづらい、話すことがないという人は話さなくてもOK
そのルールを説明
以下の点を明確に
この場は「利用者へのグチ」を言う場ではなく、広い視野での支援の一環であり、扱うのはあくまで個人情報であることを徹底
ルール
- 個人の事例発表に対して、ねぎらいや承認はしても批判はしないこと
- 事例内の利用者の人間性などに踏み込んだ人物批評はしないこと
- ここで出された事例は部外秘であり、SNS等へのアップはもちろん、現場に戻ってからプライベートで話題に出すことも厳禁とする
再発防止策の従事者へのフィードバック