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5.再発防止策の従事者へのフィードバック(2/3)

公開日:2021年3月20日

ポイント2 
双方向のコミュニケーション機会が重要

 双方向のコミュニケーションを図るうえで、具体的には以下のようなやり方が想定されます。

 例えば、マニュアルをひと通り解説した後、グループワーク(以下GW)を行ないます。そのなかで、各自の体験のなかから「兆候」と思われるケースをあげて、「この場合に自分はどうすべきなのか」をマニュアルに沿いながらグループ内で発表させます。

 問題は、GWに参加する従事者のなかに、ハラスメントケースにおける「相談のしにくさ」と同じ心理状況が生じやすいことです。
 その状況とは、「自分の対応が悪いから、相手の言葉使いが荒くなったのではないか」とか、利用者が認知症であれば「自分のケアがまずいからではないか」というようなものです。

 また、「兆候」というレベルだと、「それは思い過ごし」とか「自意識過剰」と指摘されてしまうかもしれない――こうした周囲の評価を本人はとても気にします。
 特に若い従事者の場合、「他者が自分をどう見ているか」について敏感です。主催側(ハラスメント対応の委員会など)としては、こうした心理に配慮しないと研修の効果をあげられません。

 そこで必要なのが、GWを始める前に、以下の目的をきちんと表明することです。
 それは、

  • ①マニュアルは完成形ではなく委員会として「見落としているケース」もまだあるはずで、GWはそのリサーチ機会でもあること
  • ②従事者が「嫌な思い」をする状況がある場合、理由にかかわらず、それは法人として解決しなければならないこと

です。

 これにより、どのような発言も「組織にとって必要なもの」という基準を明らかにします。そのうえで、以下のようなルールも設定しておきます。

  • ①GWでの発言を承認はしても批判してはならないこと
  • ②利用者等の具体的な言動に焦点を当てるのであって、「この人はこうだから」といった偏見につながる人物批評はしないこと

 などです。

双方向のコミュニケーションを
活かした研修の進め方(その1)

ハラスメント防止マニュアルに
かかる研修タイミング
  • マニュアルを新規作成
  • 新たな事例発生によるマニュアルの見直し
  • 重大な事例(従事者がケガで休職に至ったなど)の発生(※)

※マニュアル見直しの前に「既存のマニュアル」の再徹底を目的として実施

STEP1.全員参加の座学で
マニュアル内容を説明
 ②の場合は「見直し」部分、③重大事例の周知(被害者は匿名とする)
STEP2.説明したマニュアルに
ついての質疑応答
 特に、「被害を受けた従事者が相談・報告することで、査定上の不利益は絶対に生じない」「当の加害者に『上司への報告』の事実が漏れないように図る」ことなどは明確に
STEP3.GW実施の前に
その趣旨を説明

以下の点を明確に

 従事者が嫌な思いをする状況は、どんな理由があれ法人として解決しなければならない。「見落とし」を探るのは、そのためである

趣旨

  • 従事者個人の現場体験を発表してもらい、実際にマニュアルに落とし込みながら理解を深めてもらう
  • マニュアルは完成形ではなく、見落しケースもある。その「見落とし」を探るリサーチ機会でもある

※どうしても話しづらい、話すことがないという人は話さなくてもOK

STEP4.GW実施の前に
そのルールを説明

以下の点を明確に

 この場は「利用者へのグチ」を言う場ではなく、広い視野での支援の一環であり、扱うのはあくまで個人情報であることを徹底

ルール

  • 個人の事例発表に対して、ねぎらいや承認はしても批判はしないこと
  • 事例内の利用者の人間性などに踏み込んだ人物批評はしないこと
  • ここで出された事例は部外秘であり、SNS等へのアップはもちろん、現場に戻ってからプライベートで話題に出すことも厳禁とする

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