MY介護の広場トップ >  介護従事者・事業者のみなさま >  介護のリスクマネジメント >  利用者・家族等からのハラスメントに対するリスクマネジメント >  第2回 利用者等によるハラスメントを防ぐうえでの出発点・<ポイント1>兆候がみられた時点からの実態把握を進めるには

利用者・家族等からのハラスメントに対するリスクマネジメント

第2回 利用者等によるハラスメントを防ぐうえでの出発点

<ポイント1>兆候がみられた時点からの実態把握を進めるには

公開日:2020年1月17日

 前回述べたとおり、利用者・家族等からのハラスメントに対しては、その兆候がみられた時点からの把握が大切です。これは、個別の事態がこじれるのを押しとどめるだけでなく、ハラスメントの発生そのものの防止にもつながります。防止策の精度を上げるには、多様な事象のなかから発生の要因・背景を丹念に分析することが欠かせません。

 しかし、そうした実態把握について事業所・施設側の体制は十分とは言えないようです。第1回でも取り上げた厚生労働省(以下厚労省)の調査(※)によれば、例えば、特養ホームで「(過去に)利用者からのハラスメントを受けたことがある」という職員は7割ですが、施設側で「ハラスメントの発生を把握している」という回答は5割未満にとどまります。職員側の「ハラスメントを受けている」という認識と事業所・施設側の把握に2割近い差があるわけです。

 では、実態把握のためには何が必要でしょうか。すぐに思いつくのは、組織内に「相談窓口を設置する」、あるいは「管理者・上司による職員の面談機会を増やす」ということでしょう。実際に、先の厚労省の調査でも、職員が「ハラスメントの対応として必要なこと」と考えている方策として、「相談しやすい組織体制の整備」が上位を占めています。

 しかし、第1回でも述べたように、利用者・家族からのハラスメントに対して職員は、「つい我慢してしまう」という心理が働きやすい状況にあります。この心理的な壁を崩さない限り、「相談窓口の設置」など形だけの体制を整えても、十分に機能させることは困難でしょう。必要なのは、窓口へ相談が確実に届くための仕組みづくりにあります。

 なお、「把握した後にどう対応していけばいいか」という先々のビジョンが定まっていないと、解決に向けた意思統一が十分に図れないまま、管理職・上司が一丸となって相談事案に向き合うという風土はなかなか築けません。図のように、相談体制を確立する時点から「受けた相談をどう分類し、対応していくか」という大まかな道のりを描いておくことがスタートラインとして重要になります。

※平成30年度厚生労働省老人保健健康増進等事業「介護現場におけるハラスメントに関する調査研究報告書」

MY介護の広場トップ >  介護従事者・事業者のみなさま >  介護のリスクマネジメント >  利用者・家族等からのハラスメントに対するリスクマネジメント >  第2回 利用者等によるハラスメントを防ぐうえでの出発点・<ポイント1>兆候がみられた時点からの実態把握を進めるには