利用者・家族等からのハラスメントに対するリスクマネジメント
第5回 再発防止策の従事者へのフィードバック
<ポイント2>双方向のコミュニケーション機会が重要
双方向のコミュニケーションを図るうえで、具体的には以下のようなやり方が想定されます。
例えば、マニュアルをひと通り解説した後、グループワーク(以下GW)を行ないます。そのなかで、各自の体験のなかから「兆候」と思われるケースをあげて、「この場合に自分はどうすべきなのか」をマニュアルに沿いながらグループ内で発表させます。
問題は、GWに参加する従事者のなかに、ハラスメントケースにおける「相談のしにくさ」と同じ心理状況が生じやすいことです。その状況とは、「自分の対応が悪いから、相手の言葉使いが荒くなったのではないか」とか、利用者が認知症であれば「自分のケアがまずいからではないか」というようなものです。
また、「兆候」というレベルだと、「それは思い過ごし」とか「自意識過剰」と指摘されてしまうかもしれない──こうした周囲の評価を本人はとても気にします。特に若い従事者の場合、「他者が自分をどう見ているか」について敏感です。主催側(ハラスメント対応の委員会など)としては、こうした心理に配慮しないと研修の効果をあげられません。
そこで必要なのが、GWを始める前に、以下の目的をきちんと表明することです。
それは、
①マニュアルは完成形ではなく委員会として「見落としているケース」もまだあるはずで、GWはそのリサーチ機会でもあること
②従事者が「嫌な思い」をする状況がある場合、理由にかかわらず、それは法人として解決しなければならないこと
です。
これにより、どのような発言も「組織にとって必要なもの」という基準を明らかにします。そのうえで、以下のようなルールも設定しておきます。
①GWでの発言を承認はしても批判してはならないこと
②利用者等の具体的な言動に焦点を当てるのであって、「この人はこうだから」といった偏見につながる人物批評はしないこと
などです。