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「ストレス」と「心と身体の不調」

一般公開日:2018.11.18

 心理社会的なストレスで体の変調をきたした状態を「心身症」と言います。「心身」の「心」は原因で、「身」が結果となります。例えば、悩み過ぎて胃潰瘍になるケースが典型例です。

 一方、ストレスで精神の変調をきたした状態は「精神疾患」と言います。例えば、悩み過ぎて幻聴など妄想症状が出て統合失調症になるケースが典型です。

 「心身症」はあくまで身体の病気、「精神疾患」はあくまで精神の病気と考えると、両者の違いが分かりやすくなります。

 ただし、ヒトの体の構造は非常に複雑で、身体不調が出現したら精神機能も落ちますし、精神状態が悪いと身体機能まで落ちてきます。お互いが密接に関連しているので、「心身相関」と呼ばれています。

 例えば、うつ病は脳内で神経伝達物質のセロトニンの機能が低下し、頑張ろうと思っても頑張れない、気分が沈んで仕方ないといった精神症状が出ます。精神機能すなわち脳の機能異常であることには違いないのですが、もっぱら身体症状が前面に出る場合もあります。

 うつ病初期には、頭痛、動悸、呼吸苦などの身体不調が出やすくなるからです。不眠、食欲不振、疲労感が顕著となる例も多いです。こうした身体不調がうつ病に気づくヒントになることがあります。

 ストレスが心や身体の異常をきたすお話をしましたが、行動の異常をきたすこともあります。未成年でしたら非行が典型ですし、成人でしたら過度な飲酒、薬物依存、脱法行為などが挙げられます。周りの人の行動がおかしいと思ったときは、その人に何かストレス原因がないか探してみるとよいかもしれません。

【執筆者プロフィール】

中尾 睦宏/なかお むつひろ

心療内科医。国際医療福祉大学医学部教授。
東京大学医学部卒業、東京大学大学院修了、ハーバード大学大学院修了。帝京大学医学部附属病院、山王病院(現在)で心療内科医として勤務。

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