マスク越しは「かゆいところに手が届かないような会話」になる
新型コロナウィルスの影響で、大部分の人がマスクを着用するようになりました。日本は花粉症などの影響もあって、元々マスク着用率がとても高い国ですから、当分はこの状況が大きく変わることはないでしょう。
そうであるならば、マスク着用のデメリットにも目を向ける必要があります。その最大のデメリットは「コミュニケーションの劣化」なのです。
マスク越しの会話は"聞えない"のではなくて"聞こえるけれど聞き取れない"。つまり「かゆいところに手が届かないような会話」になるのです。とても嫌な感覚です。
聴覚の能力が落ちてきている40歳以上の人では、このような会話はイライラ感や孤独感を増大させ、人間関係の悪化や、健康への悪影響まで引き起こす可能性があります。ましてや難聴や高齢の方々にとっては、これはもう本当に辛い!そんな事例が接客現場などで数多く報告されています。
「レジ袋有料化を説明したが伝わらず、怒り出した」「釣銭の金額が合わないと言われ、説明したが伝わらず、怒り出した」「禁煙を説明したが伝わらず、怒り出した」など、例を挙げたらキリがありません。
皆さんの職場や日常生活でも、伝わらなくてイライラしたり、感情の行き違いがあったりという事例が増えているのではないでしょうか?しかしこれは、皆が少しだけ話し方を工夫するだけで、大幅に軽減できるイライラ、行き違いでもあるのです。
【執筆者プロフィール】
坂本 真一/さかもと しんいち
(株)オトデザイナーズ代表取締役。難聴など聴こえに関する専門家。2015年より九州大学および京都光華女子大学客員教授 。
著書に「音響学を学ぶ前に読む本」(出版社:コロナ社)など。