補聴器は何度も調整が必要
実際の補聴器購入
前回にお話しした"聞こえ"で困っている、もしくは聞こえないせいでストレスを感じている場面の優先順位を、改めて補聴器屋さんに伝えてください。補聴器屋さんは、その優先順位と補聴器適合検査結果から、あなたに最も合う機種を選択し調整してくれます。
それが家族との会話なら、会話がしやすいように。うるさい職場で使いたいなら、騒音をなるべく減らすように。
補聴器は「高価な機種であれば"聞こえ"も良くなる」というものでは決してありません。不必要な機能が付いていても、使いにくくなるだけで"聞こえ"は良くなりません。
良心的な補聴器屋さんであればいたずらに高価で多機能な機種ではなく、あなたに合った機種を勧めてくれるでしょう。
補聴器を使用し始めたら
補聴器は一度の調整で完璧に合うことはあまりない機器だということを、よくよく知っておいて欲しいところです。仕事や日常生活で使ってみると「うるさい」「必要な音が聞こえない」「不快な音がする」などなど、さまざまな問題が出てくるものです。
そのときは遠慮すること無く再調整を依頼してください。この再調整を面倒臭がったり、いい加減な対応しかしてくれないようなら、その医院と補聴器屋さんは良心的とは言えません。
なぜなら、補聴器は実生活で使いながら、その人の"聞こえ"に最適になるようにあわせて行くものだからです。購入前からその前提でいることが大切です。この再調整を何回か繰り返せば、ほとんどの人が補聴器を快適に活用できるようになります。
そして補聴器を使用し始めると、「補聴器を着けているのだから聴こえるだろう」と決めつけて雑な話し方をしてくる人や、逆に「この人、耳が悪いんだ」と思って、やたらと大声で話しかけてくる人などが周囲に多くなります。
補聴器は若いころの"聞こえ"に戻してくれる機器ではありませんので、より快適に使用するためには、周囲の人の理解、具体的には「高齢者に伝わりやすい話し方」を周囲の人に知ってもらう、身につけてもらうことがとても大切です。
これについては、以下を参考にしていただくのも良いと思います。
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【執筆者プロフィール】
坂本 真一/さかもと しんいち
(株)オトデザイナーズ代表取締役。難聴など聴こえに関する専門家。2015年より九州大学および京都光華女子大学客員教授。
著書に「音響学を学ぶ前に読む本」(出版社:コロナ社)など。