介護サービス利用時の「負担」の行方
公的介護保険にお金がかかる
時代の負担増議論
2024年4月から、公的介護保険制度の仕組みが変わります。サービスを利用する人やその家族、将来的にサービスが必要になるかもしれない人にとって、最も気になるのは、サービス利用時などの「お金」の話でしょう。
公的介護保険でサービスを利用する場合、支給限度額以内のサービス量であれば、利用する人の所得によってサービス費用の1割・2割・3割の負担が必要になります。どれくらいの所得の人に何割の負担を求めるかという基準については、国が定めています。
この所得にかかる基準について、「2割負担」の人の水準を引き下げる(2割負担者の範囲を拡大する)という議論が出ていました。
人口の高齢化で介護保険を利用する人が増えています。加えて、昨今の物価高騰を受けて介護従事者が働き続けられるレベルの賃金アップを図る必要もあり、制度の運営に多くのお金がかかっているからです。
しかし、物価高騰で家計が厳しいのは、利用者側も同じです。そうしたなかで負担割合が1割だった人が2割となれば、負担は2倍。一定以上支払った場合の「払戻し(高額介護サービス費)」の仕組みがあるとはいえ、生活にも影響がおよびかねません。
そのために「介護サービスの利用を控える」となれば、介護する家族の負担が増えることにもつながります。
2割負担者拡大などは見送り。
ただし...
そうした状況を踏まえたうえで、今回は2割負担者の拡大は見送られました。
しかし、2025年以降はいわゆる団塊世代が全員75歳以上となり、公的介護保険の利用者がさらに増えることが予想されています。そうしたなかで、国は2027年度に向けて、再び「2割負担者の拡大」を検討する、としています。
なお、利用者負担については、家を中心にサービスを受ける場合の「ケアマネジャーによるケアプラン作成の費用」も課題となりました。現状でこの費用の利用者負担はありません(0円)が、いくらか負担してもらうという案です。これについても、先のサービスの利用控えというリスクがあるゆえに、やはり今回は見送りとなっています。
いずれにしても、大きな負担増はなくなったわけですが、ほっとするのは早いかもしれません。実は、施設を利用した場合の負担や公的介護保険料の引き上げが行なわれます。
次回はその点についてふれることにしましょう。
【執筆者プロフィール】
田中 元/たなか はじめ
昭和37年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・介護等をテーマとした取材、執筆、ラジオ・テレビ出演、講演等を行なっている。著書に『介護事故・トラブル防止完璧マニュアル』『全図解イラスト 認知症ケアができる人材の育て方』(ぱる出版)など多数。
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