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介護サービスの質を高める取組み①

一般公開日:2024.9.22

いざという時の介護と医療の
協力関係は?

 前回まで、65歳以上の公的介護保険料が上がることなどについて述べました。被保険者としては「高い保険料に見合うだけの質の高いサービスが受けられるか」を確認したいところでしょう。

 そのサービスの質の向上に向けた取組みのなかで、今回は介護と医療のつながりに焦点を当てます。介護を受ける人が高齢化し、入院期間の短縮で急性期から間もない人が公的介護保険を使うケースも増えています。
 そうなると、利用者の容態急変の懸念も高まります。新型コロナのような感染症拡大下では、なおさらです。「いざという時に介護と医療がしっかり協力関係を組んでくれるか」が気になるでしょう。

施設の「協力医療機関」が
してくれること

 特別養護老人ホーム(特養ホーム)などの介護保険施設では、利用者の容態急変などに備え、協力医療機関を定めています。この協力医療機関の役割が、はっきり示されました。

 具体的には、利用者の容態急変時に往診等を行ない、診断結果により原則として入院させる体制が整っていることが求められます。施設側が「協力医療機関」を定める際は、こうした条件を満たすことを確認しなければなりません(2027年3月末までは努力義務)。

 また、協力医療機関との間で、利用者の病歴情報などを共有するための定期的な会議を行なった場合には、介護保険施設への給付に上乗せ(加算)が行なわれます。
 つまり、利用者の状態が安定している時から「いざという時」の対応を協議するわけです。この加算は、特養ホーム等だけでなく、介護付き有料老人ホームや認知症グループホームにも適用されます(協力医療機関連携加算)。

入院後のスムーズな退院を
めざすために

 また、利用者の容態が悪化して入院する際には、早期に退院できるように介護サービス側から医療機関にさまざまな情報が提供されます。例えば、運動機能や認知機能の情報などを提供することで、医療機関としては退院に向けたリハビリなどをスムーズに進めることができます。

 こうした情報提供を報酬上で評価した仕組みが、特養ホームや介護付き有料老人ホームにも設けられています(退所時情報提供加算/退居時情報提供加算)。

 さらに、家から入院する際には、担当ケアマネジャーから医療機関への情報提供にも公的介護保険から給付されます(入院時情報連携加算)。今改正では、この情報提供のスピードアップが図られました。最も速い場合、入院当日(あるいは入院が決まった時点)で情報が提供されます。
 医療機関は、利用者の病歴や現在の状態を把握し、より適切な治療計画を立てたり、服薬管理を行なったりすることができるようになります。また、入院中や退院後のケアをスムーズに進めることも可能になります。

 さて、利用者の高齢化に伴う課題といえば、認知症の人も増えてくるという点です。
 次回は、この認知症の症状を緩和するための取組みなどについて取り上げます。

【執筆者プロフィール】

田中 元/たなか はじめ

昭和37年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・介護等をテーマとした取材、執筆、ラジオ・テレビ出演、講演等を行なっている。著書に『介護事故・トラブル防止完璧マニュアル』『全図解イラスト 認知症ケアができる人材の育て方』(ぱる出版)など多数。

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