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介護サービスを担う職員は足りるのか?

一般公開日:2024.9.22

介護職員の賃金アップを
図るために

 高齢化が進む中、「将来的に介護サービスが足りるのか」は気になるところです。仮に事業所や施設が増えても、そこで働く介護職員が足りなければ、利用者の受入れは限られてしまいます。職員の確保には、現状の物価上昇に見合うだけの賃金のアップが必要です。

 そのため、公的介護保険から事業所・施設への給付(介護報酬)には、「主に介護職員の賃金アップにあてること」を目的とした加算(上乗せ分)が設けられています。これを処遇改善加算といいます。2024年6月から、この処遇改善加算の仕組みが見直され、金額も引き上げられることになりました。

これまでの処遇改善加算を見直し

 もともと処遇改善加算には、介護職員処遇改善加算をベースに、上乗せとなる介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算(以下、ベア加算)の3つがあります。職員不足が問題となるたび、新加算で上積みを図ってきたことによるものです。

 ただし、それぞれの加算を取るには、一定の取組みが求められます。例えば、職務内容にもとづく賃金体系や昇給のルールを定めたり、働きやすい職場環境づくりに取り組むなど。ベア加算では、加算額の一定以上をベースアップ(基本給などの水準を一律に引き上げること)にあてるルールもあります。

 問題は、こうしたルールが加算によってバラバラで事業所・施設の実務上の負担になっていたことです。そのために算定をあきらめるケースもあったことから、一部のルールを統一し、段階的にステップを踏みながら高い加算を取るという仕組みに再編されました。

加算率も引き上げ。利用者への
影響は?

 なお、処遇改善加算は、その事業所・施設が算定する全介護報酬にサービス種別ごとに定めた割合(加算率)を掛けて算出されます。この加算率が、やはり6月から引き上げられます。例えば特別養護老人ホームだと、旧3加算をすべて足して12.6%だったものが、新加算の最も高い区分で14.0%となります。

 そうなると、一定(給付額の1~3割)の自己負担が発生する利用者には、例えば上記のケースですと1.4%の負担増となります。「職員が足りないのは大変だから仕方ない」と納得する人もいれば、「これで本当に職員確保が進むの」と懐疑的な人もいるかもしれません。

 在宅介護サービスを利用している場合は、要介護度に応じて公的介護保険が適用になる介護サービスの上限額(区分支給限度基準額)があります。ちなみに、処遇改善加算は区分支給限度基準額の範囲外なので、今回の加算率引き上げの影響はありません。

 一方で、介護サービスの利用者負担が一定額以上になると利用料を払い戻しする「高額介護サービス費支給制度」という制度があります。高額介護サービス費支給制度が適用される場合は利用者負担の増加分が軽減されます。

 注意したいのは、将来的に少子化で労働力人口が減っていくことです。そうなると、処遇改善加算の上乗せだけでは職員確保はままなりません。
 次回は、そうした状況にどう対応していくのかという課題を取り上げます。

【執筆者プロフィール】

田中 元/たなか はじめ

昭和37年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・介護等をテーマとした取材、執筆、ラジオ・テレビ出演、講演等を行なっている。著書に『介護事故・トラブル防止完璧マニュアル』『全図解イラスト 認知症ケアができる人材の育て方』(ぱる出版)など多数。

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