施設利用時の室料と65歳以上の保険料
2024年度以降の高齢者の
二つの負担増
前回述べたとおり、「サービス料の2割負担者の拡大」や「ケアプラン作成時の利用者負担の導入」は、2024年度は見送りとなりました。ただし、国民の負担増がなくなったわけではありません。
一つめは、介護保険施設での「サービス利用料とは別に支払うお金」の引き上げが決まったこと。二つめは、65歳以上の人が支払う公的介護保険料(1号保険料)について、高所得者の人の納める分が大きく引き上げられる可能性が出てきたことです。
施設の居住費が引き上げとなる
ケース
一つめについては、家賃代にあたる居住費(室料+光熱水費)の基準費用額が、2024年8月から1日60円引き上げとなります。
基準費用額というのは、各施設が入所者に負担を求める場合の「基準」となる金額です。低所得者は負担額が低く抑えられますが、この基準費用額と低く抑えられた負担額の差額が、国から施設に対して補足的な給付(補足給付)として支払われる仕組みとなっています。
これは、物価高騰による光熱水費の上昇に配慮したものです。基準費用額が上がれば、低所得者の負担も引き上げとなります。ただし、生活保護受給者などの多床室利用者で居住費負担が0円となっているケースでは、負担は増えない予定です。
また、居住費のうちの「室料」にあたる部分について、新たな負担が導入されます。これまで介護老人保健施設(以下、老健)や介護医療院の多床室(4人部屋など)は、入所者の室料負担はありませんでした(光熱水費のみ)。
これが、2025年8月から居室面積の規模や老健・介護医療院の種類(在宅復帰等の支援機能が強化されていない老健など)によって、月額8,000円程度の室料負担が発生します。
ただし、低所得者(世帯全員が住民税非課税など)については、先に述べた補足給付によって負担増は発生しません。
高所得の高齢者の
公的介護保険料もアップ
二つめの65歳以上の人の公的介護保険料ですが、介護従事者の賃金アップや低所得者の保険料負担の軽減に使うお金の分をカバーするため、高所得の人の保険料負担を引き上げやすくする仕組みが定められました。
具体的には、所得段階(国が定める標準段階)を増やし、中間層に大きな負担増が及ばないようにしながら、より高い所得の人の負担を引き上げるというやり方です。これにより、一定以上の所得がある人の公的介護保険料は今まで以上に引き上げられることになります。
これだけ負担が増えるとなれば、「それに見合ったサービスが受けられるのか」が気になります。
次回は、2024年度公的介護保険制度改正でサービスの中身がどうなったかを取り上げます。
※65歳以上の公的介護保険料は、国が定める標準段階をベースに各自治体の状況を反映して自治体ごとに定められています。詳しくはお住まいの自治体にご確認ください。
【執筆者プロフィール】
田中 元/たなか はじめ
昭和37年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・介護等をテーマとした取材、執筆、ラジオ・テレビ出演、講演等を行なっている。著書に『介護事故・トラブル防止完璧マニュアル』『全図解イラスト 認知症ケアができる人材の育て方』(ぱる出版)など多数。
2024年度公的介護保険制度改正で何が変わる?
施設利用時の室料と65歳以上の保険料