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送迎シーンのヒヤリハット

 送迎時は、限られた人数での対応、運転者の車両操作、利用者の体調急変など、さまざまなリスク要因が存在します。室内の移動とは違い、天候や路面の状況などもリスク要因になります。
 特に送迎車の乗降時における転倒リスクが高いので、通常の移動は心配ない自立歩行の利用者であっても、乗降時は注意して見守りをしましょう。
 運転者、同乗者、出迎えなど送迎にかかわる職員は十分に連携をとり、リスクを減らしましょう。

<送迎シーンのヒヤリハット
について考えてみよう!>

 下のイラストには4つのヒヤリハットが書かれています。どこにリスクがあるか考えてみましょう。

「送迎シーンのヒヤリハットについて考えてみよう!」の画像①
「送迎シーンのヒヤリハットについて考えてみよう!」の画像②

ヒヤリハット①
送迎車のドア(ドアが開くと下からステップが出るタイプ)の正面に近づいて待っている

ここが危ない!

「送迎シーンのヒヤリハット①」の画像

 送迎車のドアを開けたときに、ステップに足をぶつけるリスクがある

原因

 ドアの正面への近づき過ぎが原因です。ドアを開けると下からステップが出るタイプの送迎車の場合、ステップが出てくることを想定した位置に利用者を誘導しないといけません。

対策

 送迎車のドアから距離をとって立つか、ドアに対して斜め横に立つことでステップにぶつかる事故を防げます。
 さまざまなタイプの送迎車がありますので、送迎車ごとに注意するポイントを理解し、利用者が不安や恐怖を感じないよう適切な介助を心がけましょう。

ヒヤリハット②
送迎車の前で待っている片麻痺の利用者の健側に介護職員が立っている

ここが危ない!

「送迎シーンのヒヤリハット②」の画像

 片麻痺の利用者がバランスを崩した時、介護職員が健側に立っていると支えられず、転倒するリスクがある

原因

 介護職員が、片麻痺の利用者の健側で介助していることが原因です。片麻痺の利用者は麻痺側の運動機能障害や手足の感覚麻痺によって、身体のバランスを取りにくく麻痺側に転倒するリスクが高くなります。そのため、介護職員が健側にいてはいざというとき支えられません。

対策

 片麻痺の利用者の介助・見守りにおいては、介護職員は麻痺側に位置することが基本です。
 イラストのケースでは、介護職員は利用者の麻痺側(左側)後方に付き添いながら、送迎車のドアの右斜め横に利用者を誘導します。介護職員はドア正面に位置し、利用者の麻痺側から見守りをしつつ、ドアを開けましょう。ドアが完全に開いたことを確認してから、利用者を送迎車の中に誘導します。

(補足解説)
 ステップを上がるときは、利用者は杖を上段につき、健側の足から上がり、次に麻痺側の足をそろえます。介護職員は麻痺側後方から利用者の体を支えます。利用者から杖を預かり、車両の手すりを握ってもらって上がる方法もあります。

ヒヤリハット③
介護職員が片手で車いすを押し、もう一方の手で荷物を持っている

ここが危ない!

「送迎シーンのヒヤリハット③」の画像

 片手で車いすを押すと、進む方向やスピードのコントロールが困難になり事故発生のリスクがある

原因

 利用者の荷物を持つために、つい片手で車いすを押してしまうことがありますが、道路は平たんではなく少しの斜面でもスピードが出るため、片手では車いすをコントロールできず事故を防ぐことができません。
 また、片方の手に荷物を持っている状態は介護職員のとっさの行動を妨げ、荷物に気をとられることで注意力も散漫になり、事故につながります。

対策

 両手での車いす介助を徹底します。利用者の荷物については無理をせず、ほかの介護職員に協力を求めましょう。

ヒヤリハット④
降車時に自立歩行の利用者の見守りを怠っている

ここが危ない!

「送迎シーンのヒヤリハット④」の画像

 利用者がステップを踏みはずして転落するリスクがある

原因

 自立歩行の利用者という安心感から介護職員が見守りを怠り、職員同士の会話に気をとられています。自立歩行の利用者でも、送迎車から降りるときに膝折れやステップを踏みはずすことがあります。

対策

 送迎車の乗降時には、自立歩行の利用者でも油断せず必ず利用者を見守り、声かけをしましょう。
 また、自立している利用者でもその日の体調によっては動作が不安定になることを念頭において、常に利用者の観察を怠らないようにします。

知っておきたい⑥ヒヤリハットを減らす心構え

ヒヤリハットを積極的に
共有しましょう

 ヒヤリハットした体験を自分の責任ととらえて隠すのではなく、積極的に報告書を提出しましょう。職場全体の問題として共有し、ヒヤリハットを減らす取組みに活用しましょう。

個別ケアの視点でリスクを
把握しましょう

 利用者の心身の状態に応じてリスクの内容・程度は違い、対応方法も異なってきます。利用者一人ひとりのリスクを個別ケアの視点で情報収集することが重要です。
 また、利用者の心身状態の変化にともなって新たなリスクが発生した場合は、速やかに口頭で報告し、同時に記録に残して職場全体で共有しましょう。

ヒヤリハットを予防する力を
養いましょう

 自職場でおこったヒヤリハットをそれぞれの場面(移動、入浴など)ごとに整理します。場面ごとに起こりやすいリスクを把握し、原因・対策を検討することで、ヒヤリハットを予防する力を養うことができます。

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