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入浴シーンのヒヤリハット

 入浴介助は、まず室温差をなくす環境を整え、「脱衣」「移動」「浴槽への出入り」「洗身」「水分補給」と多くの介助が含まれます。

 転倒・溺水・やけど・体調急変などのリスクが多いことに加えて、加齢に伴う心身機能低下の影響を受けるので十分に注意する必要があります。

<入浴シーンのヒヤリハット
について考えてみよう!>

 下のイラストには4つのヒヤリハットが書かれています。どこにリスクがあるか考えてみましょう。

「入浴シーンのヒヤリハットについて考えてみよう!」の画像

ヒヤリハット①
シャワーチェアからずり落ちそうに
なっている

ここが危ない!

「入浴シーンのヒヤリハット①」の画像

 身体を洗っている際に体がずり落ちてきて、シャワーチェアから転落してしまうリスクがある

原因

 座った姿勢で全身を洗うため身体の動きが多くなり、バランスを崩しやすい状況です。
 さらに、利用者の身体やシャワーチェアの背もたれ・肘かけ・座面に石けんがつき、すべりやすく転落のリスクも高くなります。

対策

 洗身前に安定した座位を確認し、洗う順番を声かけすると次の動作がスムーズになります。
 洗い終わったら、その都度シャワーをかけて石けんを流すことですべりにくくなります。ずり落ちそうになったら、速やかに深く座り直す介助を行ないましょう。

ヒヤリハット②
立位で浴槽をまたごうとしている

ここが危ない!

「入浴シーンのヒヤリハット②」の画像

 浴槽をまたぐ際に、バランスを崩して転倒してしまうリスクがある

原因

 加齢とともに下肢筋力が低下し、立位で浴槽をまたぐ動作はバランスを崩しやすくなります。
 今までの長い習慣で立位でまたぐことに自信を持っている利用者もいますが、特に大浴場の広い浴槽の出入りは不安定になり転倒のリスクが高くなります。

対策

 浴槽の出入口の手すりにしっかりつかまってから、片足ずつゆっくりまたぐことが転倒予防につながります。
 また、利用者に座位による浴槽への出入りの同意を得ることができればより安全です。

 個浴(※)の場合は、補助具(シャワーチェア、バスボード、すべり止めマット)を活用し、座ったまま浴槽に出入りすることで転倒のリスクを減らせます。

※個浴:家庭のお風呂のような浴槽を用いて、ひとりずつ入浴する方法です。利用者にとってプライバシーが守られるので、ストレスの軽減や安心感の向上につながります。

ヒヤリハット③
浴槽のなかで体勢が崩れてしまっている

ここが危ない!

「入浴シーンのヒヤリハット③」の画像

 浴槽内で不安定な体勢になり、溺れてしまうリスクがある

原因

 浴槽の湯に入ることで身体が浮力作用の影響を受けます。
 浮力により臀部が前にすべり、足が浮いて頭が後ろに傾くと不安定な体勢になり、浴槽の手すりを握っていないと溺水のリスクにつながります。

対策

 浴槽内に入っているときは傍で見守り、利用者の身体が安定していることを確認します。
 体勢が崩れてもあわてずに両手で腰を支え、浴槽の壁に引き寄せ、前傾の体勢に戻すと安定します。

ヒヤリハット④
脱衣所で「フラフラする」と訴えている

ここが危ない!

「入浴シーンのヒヤリハット④」の画像

 長湯により軽いのぼせや脱水を起こしてしまうリスクがある

原因

 浴槽に入っている時間が長いと発汗が増え、脱水や血圧の変動が起こるなど身体の負担が多く、のぼせるなどの体調急変の原因になります。

対策

 浴槽に入っている時間の一般的な目安は3~5分程度です。
 浴槽から出るときに急に立つと立ちくらみを起こす可能性があり、ゆっくりとした動作が安全です。
 入浴後は、脱衣所でしばらく安静にして水分を摂取してもらうと脱水予防になります。

知っておきたい②ヒヤリハット(インシデント)報告書
について

 介護事故が起こった時に事故報告書を作成しますが、事業所によってはヒヤリハットの発生時にヒヤリハット(インシデント)報告書を作成します。

 ヒヤリハットを放置しておくと、いずれ事故につながります。そのため、ヒヤリハットの原因を分析し、再発防止を図ることが重要です。

 報告書の書式は事業所により異なりますが、できるだけ簡素に提出しやすい内容とし、具体的には発生状況・原因・再発防止(改善)策を検討して記入し、介護職員全員が共有します。
 ヒヤリハット報告書を始末書のようにとらえて介護職員が書きたがらない事業所もあるようです。ヒヤリハットは個々のスタッフの気付きを皆で共有して事業所全体のリスクを減らす取り組みです。ヒヤリハット報告書を積極的に書く職員が評価される事業所でありたいですね。

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