トイレシーンのヒヤリハット
トイレ介助は一連の動作(移動、ズボンの上げ下げ・パッド交換、便座への移乗、清潔保持など)に失禁、転倒、転落などのリスクを伴います。
また、利用者の羞恥心とプライバシーに配慮しながら手際よく、速やかに行なうことが求められます。1日に何回も繰り返す介助のため、常に安全かつスムーズに行なうことが必要です。
<トイレシーンのヒヤリハット
について考えてみよう!>
下のイラストには4つのヒヤリハットが書かれています。どこにリスクがあるか考えてみましょう。


ヒヤリハット①
便秘により長時間便座に座ることで、姿勢が傾いている
ここが危ない!

便座に長時間座っていると、座位のバランスを崩し便座からずり落ちるリスクがある
原因
高齢になると便秘になりやすく、排便時には長時間便座に座ることになりがちです。
便座からの転落リスク以外にも、排便の際に力が入ることで血圧が変動するリスクもあります。
対策
介護職員は日ごろの排便回数・状態や食事の量などから、利用者の排便の状況を確認します。
看護師などの医療職と連携して腹部マッサージ、浣腸、
便秘を改善するための運動や食事について他職種と検討することも重要です。
※摘便:直腸に指をいれて、たまった便を取り除きます。医療行為のため看護師が行ないます。
ヒヤリハット②
利用者への声かけ(手すりをつかむ)や足台の使用を忘れている
ここが危ない!

利用者が手すりを持たず、足が床にしっかりついていない状態で座っているので、便座から転落のリスクがある
原因
介護職員が「手すりを持ってください」と声をかけ、手すりをしっかり握っていることの確認を怠っています。また、足が床にしっかりついているか確認せず、足台の使用を忘れてしまっています。
対策
トイレ介助がマンネリ化すると声かけや足台を忘れるなど、うっかりミスが起こります。
トイレ使用前後の環境の確認と「1ケア1声かけ」を徹底しましょう。
ヒヤリハット③
トイレの便座から車いすへ自力で移乗しようとしてフラッとしてしまった
ここが危ない!

いつもはひとりでできている動作でも、その日の体調によって不安定になるリスクがある
原因
いつもは手すりをつかんで立てる利用者でも、その日の体調(腕や膝の痛み、めまい、ふらつきなど)によっては手が手すりからはなれてしまうことも考えられます。
介護職員は利用者がいつもできると思いこまず、その日の状況に応じてリスクを意識することが必要です。
対策
いつもできていることが体調変化などにより、できなくなることもあります。その日の体調にあわせた見守りや介助の検討が重要です。
自分で排泄動作ができる利用者に対しては、プライバシーを守るためにドアの外で待機することが基本ですが、その日の状況によってリスクが高いと判断されるときは、トイレ内で羞恥心に配慮して見守ることが事故防止につながります。
ヒヤリハット④
外で待機している介護職員がほかの利用者に話しかけられて、気を取られている
ここが危ない!

待機中に、ほかの利用者に対応することで、トイレ内の利用者の様子(異変)に気付けないリスクがある
原因
話しかけられたほかの利用者に意識を向けてしまったため、トイレ内の利用者の様子(異変)に気付くことができず、対応が遅れてしまいました。
対策
介護職員はトイレの外での待機も見守り中であることを意識し、気をそらさず利用者のトイレ介助に集中することが重要です。
ほかの利用者から話しかけられた場合は、別の介護職員に協力を求めることが必要です。
知っておきたい③ヒヤリハットを職場で共有する方法
について
自職場で提出されたヒヤリハット報告書がファイルに保存されたまま誰にも見られず、共有されないということが介護現場ではありがちです。作成したファイルを共有するために、マニュアルを作成し、管理者を決め、誰もが閲覧できる仕組みをつくりましょう。
また、安全管理委員会などが文書により職員全員に伝達し、共有する方法もあります。
介護施設や事業所によっては、毎日の朝・夕の申し送りの際に口頭により伝達しています。特に緊急に周知したいヒヤリハットは業務に入る前の情報共有が有効です。
ヒヤリハットを職場のミーティングや職員研修の事例として活用することもできます。
ヒヤリハットを共有する場合の注意事項として、個人情報の保護を徹底しましょう。