2.在宅におけるリスクをどう把握するか?(1/3)
ポイント1
見えにくい「生活の流れ」にも
注意を
在宅介護にはヘルパーなどのサービス提供者がかかわりますが、施設などと異なり、24時間当事者に接し続けるというわけにはいきません。とはいえ、サービス提供者の入っていない時間帯にも利用者の生活はとぎれることなく続いています。それは必ずしもサービス提供者が見ている「生活」とはまた違う側面もあります。
そこで、その生活において生じるリスクについても、専門職によるアセスメントだけでは把握しきれないものがあります。
例えば、ベッド柵などにつかまっての立位が保てる人でも、夜間に目が覚めたとき半覚醒の状態でふらついて転倒することがあります。また認知症の人の場合、昼夜でBPSD(行動・心理症状)(※1)が大きく変化することもあります。
それから、通所サービスを受けている間「元気で社交性もある」という状態を見せている人でも、内面ではストレスをためているというケースもあります。その場合、家に戻ってからついイライラして、家族との折り合いが悪くなる懸念も生じます。
こうした表面にはなかなか表れないリスクに対し、「サービス時さえ事故が起こらなければ、提供者側の責任にはならない」と考えるのはいささか危険な判断です。
何かあって、それが直接に責任は問われるものでなくても、例えば夜間の転倒で骨折→入院となれば、在宅での介護サービスは中断してしまいます。
また、家族のネグレクトにより栄養状態が悪化すれば、生活全般に影響が出るだけでなく、
こうした見えないリスクが積み重なると、サービスの稼働率低下や職員への負担増加を招き、サービス運営に支障をきたす恐れも出てきます。
「直接責任を問われる」ことと同じように、深刻な事態ととらえることが必要です。
サービス提供時だけでは、
「見えない生活」もある
※1 BPSD(行動・心理症状)
(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略)
認知症の症状には、「中核症状」と「行動・心理症状」(「周辺症状」とも言われる)がある。「中核症状」には記憶障害・見当識障害・理解の低下などがあり、そこから二次的に起こる「行動・心理症状」は、徘徊・不潔行為・異食・人格変化・妄想などの形で現れる。
※2
臥床を続けると、腰やおしり、足などの同じ部分の皮膚に体重がかかり続けるため、圧迫による血流不良のために皮膚が壊死してしまう。これを褥瘡または床ずれという。
在宅におけるリスクをどう把握するか?