5.それでも事故が起こった際の対処法(3/3)
ポイント3
応急処置や事故後の記録作成に
ついて
救急搬送の手配を行なって、救急隊員の到着を待つ間、適切な応急処置を施すことで救命率が上がることもあります。例えば、呼吸をしていない、心肺が停止している、大量の出血があるという状況では、プロとして必要な応急処置を行なうことが求められます。
その場合、正しい応急処置の方法を身に付けておくことが欠かせません。普段やりつけないことですから、1回の研修だけでは(気が動転している状況もあって)忘れてしまうことがあります。半年に1回程度は、消防署や日本赤十字社などで開催される救命処置の講習などに、事業所として参加する(あるいは講師を派遣してもらう)ことを企画しましょう。
もちろん、応急処置を施した場合は、到着した救急隊員にその旨を伝えます。その後は救急車に同乗するのではなく、事業所や家族の連絡先を救急隊員に告げたうえで、事業所の指示を仰ぐことに徹しましょう。
その後の病院や家族とのやり取りは事業所に任せたうえで、当の担当者としては記憶が薄れないうちに、正確な事故記録を作成することに専念します。例えば、その場の事故状況が医師に伝わるなかで、「頭を打つだけでなく、足も骨折している可能性がある」ことが明らかになったというケースもあります。
また、事故が発生したということは、事前のアセスメントの取り方など、事業所としてのリスクが顕在化した現れであるという可能性もあります。その点を事故記録で明らかにすることが、再発防止にもつながるわけです。
次回は、利用者の自宅で発生しやすい物損事故や、家族による虐待の早期発見(介護職にとっての大切な責務の一つでもあります)といったケースについて触れましょう。
事故報告書に記すべき事項について
(行政に届ける情報には、被保険者番号などの記入も必要になる)
- ①事故が発生した年月日・場所
- ②事故の種別(転倒、誤嚥など)
- ③事故の状況について(前後の状況を含め、できるだけ詳細に)
- ④発生原因
(現場に居合わせた担当者としての見解を示しつつ、あとでチーム内での振り返りを必ず行なう)
- ①事故発生時の応急処置などの対応
- ②救急搬送の手配など、どのような機関への連絡を行ない、何を伝えたか
- ③事業所、家族への連絡を行なったかどうか、何を伝えたか
- ④救急搬送までの間などで、利用者の状況はどうであったか
(医師の診断などが終了した後に記す)
- ①治療後の利用者の状況について
(入院期間はどれくらいか、どのような医療が行なわれたか、退院後の見通しなど) - ②再発防止への取り組みについて
(事業所内で「振り返り」を行ない、再発防止策などの決定事項を記す) - ③損害賠償等の状況(原則として、事業所の管理者等が記す)
不信をいだかれると、訴訟問題などにつながりかねない。