介護以外の地域生活課題にも「丸ごと」対応
地域生活課題を「わが事」としてとらえるとは言っても、解決に向けては行政や専門機関のフォローが欠かせません。改正された社会福祉法では、具体的なフォローのあり方についても触れています。
例えば、市区町村に対しては、地域生活課題全般の解決に向けた「地域福祉計画」の策定を「努力義務」へと格上げしました。そのうえで、役所内で地域生活課題ごとに「縦割り」になりがちな対応を改めることを求めています。言い換えれば、高齢者福祉、障がい者福祉、児童福祉等のジャンルにかかわりなく「丸ごと」対応できる体制(例.総合的な相談窓口など)を築こうというわけです。
こうした「丸ごと」対応のほか、一般の住民にとってかかわりが深い点としては、以下のような内容も見られます。地域生活課題について、一般住民が「把握」し「解決」に動くには、住民同士が交流したり、福祉活動に携わるプラットフォーム(場や機会)が必要です。その場づくりや活動にかかる支援(研修等も含む)に、市区町村が積極的にかかわることを求めています。
場づくりで言えば、18年4月から全市区町村に生活支援体制整備事業が義務づけられました。そのなかに、地域のさまざまな場所に(地域生活課題などを話し合う)協議体の設置や、そうした「話し合いの場」へのコーディネーターの派遣が含まれています。また、研修でいえば、介護保険の財源を使った介護予防・日常生活支援総合事業などで活躍するボランティア向けの入門研修などが考えられます。いずれにしても、地域住民が主体的に支え合える仕組みを作るために、市区町村として幅広い環境整備が義務づけられたわけです。
【執筆者プロフィール】
田中 元/たなか はじめ
介護福祉ジャーナリスト。立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。
2018年介護保険制度の改正について
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