重度化しないための介護保険へ模様変え
介護保険は、「高齢者に介護が必要になったときに必要なサービス」をまかなう仕組みです。ただし、もともと介護保険法では、「被保険者(40歳以上の人)が要介護状態になった場合でも、可能な限り(中略)その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮する」という旨が記されています。2018年4月からのサービス提供では、この「自立した日常生活」に向けた仕組みが今まで以上に強く打ち出されました。
サービス提供の仕組みについては後ほど述べますが、それ以前に介護保険を運営する市区町村(以下、保険者といいます)に対して、「地域の被保険者(高齢者等)の要介護度が重くならない」ような仕組みが定められました。保険者は、3年に1回の頻度で地元の介護保険の運営を進めていくうえでの計画を立てることが義務づけられています。これを介護保険事業計画といいますが、この計画に新たな項目の記載が必要となりました。
その項目とは、以下の二つです。一つは、地域の高齢者の要介護状態が重くならないようにする(自立支援・重度化防止の)ための具体的な取組みを記すこと。もう一つは、その自立支援・重度化防止の目標を定めることです。後者の目標については、3年後の計画見直しに際して「達成できたかどうか」を自己評価することも求められています。
さらに、国は自立支援・重度化防止に向けた保険者向けの指標を定めていて、それを点数化したうえで「点数の高い保険者」に新たな交付金を支給することになりました。これを保険者機能強化推進交付金といいます。保険者に「地域の高齢者が重度化しないように頑張ってもらう」仕組みができたわけです。
【執筆者プロフィール】
田中 元/たなか はじめ
介護福祉ジャーナリスト。立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。
2018年介護保険制度の改正について
重度化しないための介護保険へ模様変え