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第1回 <対応方法>解決に向けた工夫

工夫点

「家庭と同様でなくて申し訳ない」
という気持ちを表す

 Aさんの家でのお風呂の環境や入る時間などを、デイサービスの生活相談員に確認します。

 例えば、「夜寝る前に入る」などデイサービス利用の時間帯と大きくズレている場合は、「いつもお風呂に入られる時間と違って申し訳ないのですが」といったひと言を考えておきます。また、「奥様とちがって、慣れていない職員が介助することに申し訳ない」という気持ちを伝えるようにします。

 本人の不満は完全には解消されないかもしれませんが、「申し訳ないという気持ちはあるのだな」という思いが伝われば、怒りにつながるような、相手の我慢の限界を和らげることができます。

工夫点

入浴前後の会話から
「その気にさせる」流れも

 ケアマネジャーや生活相談員を通じて、奥様から「家でのお風呂の様子」についてお聞きします。洗身・洗髪から湯舟につかるまでの流れや、湯温、つかっている時間のほか、その時の習慣など。これを可能なだけ実現させます。

 例えば、「昔のE歌手の歌が好きでよく歌う」という話があれば、入浴前に「Eという歌手がお好きなんですか?」という話題で会話を進め、「ぜひお風呂の中で聞かせてください」とお願いしてみます。入浴後は「いい歌ですね。次もぜひお願いします」と、次へと気持ちをつなげるひと言なども有効。

工夫点

プライドを尊重しながらの
誘導がコツ

 Aさんの歩んでこられた人生は、やはりケアマネジャーなどから事前に情報が得られているはず。

 例えば、自力で家業を興してきたゆえに、「人に教えるのは得意だが、他人の指図を受けるのが苦手」という人なら、その弟子になったつもりで「その人の成してきた分野(商売など)のこと」で教えを請うてみます。

 もちろん、教えを請うためのマナーや謙虚さを忘れずに。話が盛り上がったら、「もっと伺いたいので、続きはお風呂に入りながらではいかがですか」と告げてみます。相手のプライドを尊重しながらの誘導がコツです。

<事例のふりかえり>

ポイント1 家での入浴と違う点について、申し訳ないという気持ちをまず伝える
 これによって、クレームが生じるような「我慢の沸点」を下げておく
ポイント2 家でのお風呂の習慣に近づけつつ、本人にとっての「入る楽しみ」を演出
 前後の会話から「お風呂に入る」ことを動機づけるための種まきを
ポイント3 ご利用者のプライドを尊重しながら、相手との距離感を縮める
 「この人にこう言われては仕方ないな」と思ってもらえる関係づくり

プロフィール

執筆:田中たなか はじめ

昭和37年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。
高齢者の自立・介護等をテーマとした取材、執筆、ラジオ・テレビ出演、講演等を行なっている。
著書に『介護事故・トラブル防止完璧マニュアル』『全図解イラスト 認知症ケアができる人材の育て方』(ぱる出版)など多数。

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