第2回 <対応方法>解決に向けた工夫
工夫点
性格を考えながら、
施設のなかで役割をもってもらう
Aさんの行動がトラブルを引き起こさないようにするためには、世話好きだったという情報から何か役に立とうとする人柄が影響していると考えられます。Aさんの気持ちに沿った役割を探すことが効果があると思われます。
例えば、介護職員と一緒に洗濯物たたみを行なっていただき、「ありがとうございます、助かりました。」と感謝の言葉を伝えることで満足感を得られると思います。Aさんがこれまでの生活のなかで担ってきた役割が影響されていると考えられるので、施設での役割をケアに組み入れることが求められます。
工夫点
介護施設の生活が少しでも
楽しいものとなるよう工夫する
最近、ベッド上で過ごす時間が増えているBさんが少しでも楽しいと思える時間を計画することが求められます。その場合、Bさんの以前の趣味や興味・関心がヒントになります。
例:絵を描くことが好きだった
本人に提案し同意を得たうえで絵手紙を家族へ書くなどします。
介護職員が見守り、リウマチの痛みや指先の機能に配慮しながら行なうことで面会の時間だけでなく家族との交流が増え楽しい時間が過ごせます。
例:おしゃれをして外出することが楽しみだった
好みの洋服を自分で選びおしゃれをして散歩する(体調にあわせて、車いす介助で外出)ことをケアに組みいれることでストレスの軽減になります。
工夫点
看護やリハビリの
スタッフとも連携する
介護施設ではさまざまな専門職が、それぞれの専門性をいかしてご利用者の支援をしています。
介護職だけでトラブルを解決しようとするのではなく、看護やリハビリの専門職と連携することで
- 身体的な不調(便秘や不眠など)がAさんの行動に影響していないか
- Bさんの持病の痛みを緩和することで、Bさんのストレスを軽減できないか
- ドア表示を工夫するなどの環境調整でAさんが他人の部屋を認識しやすくできないか
などの多角的な視点で検討することができます。
<事例のふりかえり>
- ポイント1
- 認知症の進行により行動に変化がみられた時から、人間関係でトラブルが起こる可能性が増えるので、変化に気づきケア方法を変更することが必要になります。
- ポイント2
- 施設の生活になじめずストレスを感じ苛立ちからトラブルを起こすご利用者に、施設の生活のなかで楽しいと感じられる時間を過ごせるケア方法を提供することが大切です。
- ポイント3
- トラブルの原因・背景を考え、解決の糸口を探りましょう。また、介護職だけで考えるのではなく、多職種が連携して、多角的に検討しましょう。

プロフィール
執筆:
介護現場で介護職と介護支援専門員、教育現場(田園調布学園大学人間福祉科など)で非常勤講師を務めた。
現在は介護労働安定センター研修講師・山野美容専門学校美容福祉にて非常勤講師。