第4回 <対応方法>解決に向けた工夫
工夫点
日常的に入居者の思いを聞き取り
職員で共有する
住み続けたかったであろう自宅から、それぞれの理由で入居された方に対するアセスメントを入居時だけではなく継続的に行なっていく必要があります。
アセスメントのポイント
- どのように暮らしていきたいか
- 心にひっかかる事
- 不満な事・満足している事
- 嗜好、やりたい事
- 家族への想い
機会あるごとにアセスメントし記録、その内容を職員で共有し積み重ねていく事が大切です。継続的なアセスメントにより、ご利用者と職員が信頼関係を築き、その人らしい生活の実現に向けて共に歩むことができるようになります。
"人生の大先輩である方々にそれぞれの考え方について教えていただく"という真摯な姿勢で接しましょう。
また、より良いアセスメントを行なうために、日ごろから高齢期の心身の変化について研鑽しておきましょう。
工夫点
トラブルに気づいた時、
解決に向けた取組みを開始する
異変が起きている事を全職員で情報共有します。当面は当事者だけになる場を作らないよう全職員が連携して対応しましょう。
本人からの聞き取りの際は、プライドを傷つけないように十分注意して個別に話を聞きます。「コーラスの時間」以外にも原因があるかもしれないということを念頭に聞き取りを行ないます。
ささいな事ととらえず早い段階で家族に報告する事も大切です。職員には言えない(言わない)事も家族になら胸のうちを打ち明ける方もいらっしゃり家族から情報を頂ける場合もあります。
また、トラブルの内容や出来事を詳細に記録し、どう対応しているかなどふりかえりができる記録を日ごろから習慣づけておく事も大切です。
工夫点
アクティビティ(活動)で
より良い関係づくりを
アクティビティで生じる人間関係の変化が良い方向に向かうこともあれば、悪い方向に向かう場合もあります。対立などが生じ、参加者間で解決できない状況であれば職員などの第三者が介入して調整することも必要です。
事例の場合は、職員が介入するにしても、Aさん・Bさんのどちらかを支持するということは難しいと思います。
- 活動のふりかえりの時間を持ち、多くの参加者から発言してもらい、特定の人の意見に偏らないように調整する
- コーラスの指導者(ボランティア)に入ってもらい、意見の違いや活動内容を調整する
などの方法が考えられます。
活動の内容で参加者の好みが判ったり、それまでの人生が垣間見えたり、意外な一面に気付く事もあります。アクティビティをより効果的に行なうために、施設によっては専門職員を配置し毎月さまざまな予定を立て事前に入居者や家族に通知しています。その活動内容を施設の特徴として強く打ち出している所もあります。
<事例のふりかえり>
- ポイント1 日ごろから入居者の思いや趣味嗜好、
考え方などさまざまなアセスメントをする - 全体として見るだけではなく、より深くその人を知る
- ポイント2 トラブルに気づいた時、早い段階でその事実を職員間で共有する
- トラブル内容を詳細に記録し、
いつでも誰でも理解やふりかえりができるようにする - ポイント3 アクティビティ(活動)は楽しみとして行なうだけではない
- 同じ施設で暮らす人達のより良い関係性作りの一手段である
プロフィール
執筆:
主任介護支援専門員・介護福祉士・
社会福祉士・聴き方マスター2段。
有料ホームや在宅で、訪問介護員、居宅の介護支援専門員を経て、現在は認定調査員として勤務。