第5回 <背景・原因>なぜ、このようなことが起こったのでしょうか?
介護施設でも自宅でも、「転倒」「溺水」「ヒートショック」などの入浴時の事故は多発しています。浴室内の床は濡れていて滑りやすく、足腰の弱い高齢者の場合、介助を受けていてもバランスを崩すことがあります。それだけに細心の注意が必要になります。また不安が高まり入浴の機会が減ると利用者のQOLにも影響を及ぼします。
どうしてこうなった?①
浴槽内での体勢の安定に注意が向けられていなかったのでは
利用者の体型によっては、浴槽内で浮力作用の影響を受けてしまい、お尻や足が浮き上がり、不安定な体勢になることを考慮していなかったのではないか?
確認するためのポイント①
Aさんのように小柄で体重が軽い方などは体型や筋力低下により、浴槽内での体勢が不安定になる場合があります。
浴槽の中で頭が後ろに傾くと、お尻が前にすべり、足が浮いて不安定な姿勢になり、溺れる事故も起こることがあります。
今までは大丈夫だった、と思うかもしれませんが利用者の状況は日々変化します。その日の体調なども含め十分に把握しましょう。
どうしてこうなった?②
片麻痺の人への介助方法が十分ではなかったのでは
脳梗塞による片麻痺があるため浴槽への出入りの際は、身体のバランスを崩しやすい。今回はあわてて浴槽から出ようとする利用者への対応が追いつかなかったのではないか?
確認するためのポイント②
片麻痺がある場合、浴槽の出入りの際、身体のバランスを崩しやすく、またぐ動作でふらつき転倒してしまう事故が起こりやすいと言われています。
特にAさんには下肢に軽度の麻痺があることをふまえ、転倒を予防する介助方法を行なう必要があります。
また、どのような方法で浴槽の出入りをするのかをご利用者に説明し、同意を得ておくことも大切です。
どうしてこうなった?③
転倒しそうになった経験からくる不安があったのでは
過去に浴室の洗い場で転倒しそうになった経験から、再度滑ってしまうことへの恐怖感があるのではないか?
確認するためのポイント③
浴室の床は濡れており、さらに身体を洗ったあとの石けんの泡が流し足りないとすべりやすくなります。安全な環境になっているでしょうか。
利用者の立ち上がり動作をスムーズに行なうための声かけや、利用者の身体機能に応じた介助方法が必要です。
また、立ち上がりの際の転倒のリスクを減らすために福祉用具を適切に利用することも考えましょう。