第5回 <対応方法>解決に向けた工夫
工夫点
利用者に安心感を与える浴槽内での対応と声かけ
Aさんが安心して入浴できるために、浴槽内の体勢が安定しているか確認し、常に見守ることが必要です。足やお尻が浮いてしまえば、Aさんが不安になるのは当然です。
利用者の体が浮いた場合は、介護職員はあわてず落ちついて「大丈夫ですよ、私が腰を支えますので手すりを持って少し前かがみになっていただけますか」など声かけしながら、安定した体勢に戻す誘導をします。
湯量を少なくする等、不安を感じないように環境を適切に整えることも一つの方法です。
また、場合によっては、浴槽内に福祉用具の浴槽台を置き、その上に座ってもらい足元にすべり止めマットを敷くことで体勢は安定します。しかし、半身浴になるのでかけ湯をして上半身を温める介助も必要です。
工夫点
安全に浴槽の出入りをするための
介助方法と福祉用具の活用
介護者は麻痺側への転倒に注意し、麻痺側に立って身体を支えるようにします。
立った状態で浴槽の出入りをすることはバランスを崩して転倒する危険があり、座ったまま浴槽をまたぐ介助方法が安全です。
座ったまま浴槽をまたぐために福祉用具のシャワーチェア、バスボード、すべり止めマットを活用するといいでしょう。
シャワーチェアに座った状態からバスボードにゆっくり移乗する介助方法が転倒予防になります。介護職員が声かけすることにより次の動作を誘導することで利用者は不安がやわらぐと思われます。
工夫点
洗い場での転倒を防ぐための
環境整備と介助方法
洗い場でのシャワーチェアから立ち上がりや移動の際には、床や足底の石けんを十分に洗い流すことが重要です。シャワーチェアの足元にはすべり止めマットを敷き、すべらないよう予防します。
立ち上がりの介助はシャワーチェアの座面が利用者の足の長さにあわせて調整されているかを確認し、調整した脚が固定されているかの安全確認が必要です。福祉用具は繰り返し使用しているうちに劣化し事故につながることがあります。福祉用具の使用前には安全確認を欠かさず行ないましょう。
立ち上がりの動作はシャワーチェアに浅く座り直し、足を引いて前かがみの姿勢で立ち上がると、重心移動がスムーズにできて立ち上がりやすいです。介護職員は麻痺側に立ち、膝折れの心配がある場合は膝を手で支えるとよいでしょう。
これらの介助技術を介護職員全員が共有するために実技研修の実施が求められます。
<事例のふりかえり>
- ポイント1
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入浴介助においては、浴槽内での体勢が安定しているか確認し、常に見守ることが必要。
体勢が崩れたときは、あわてずに声かけして安定した状態に戻す介助を行なう。
浴槽内で体勢を安定させるための福祉用具の活用も検討する。 - ポイント2
- 片麻痺の利用者が浴槽をまたぐ際、座ったままでまたげるよう福祉用具を十分に活用することで安全・安心な入浴介助ができる。
- ポイント3
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浴室は足がすべりやすく転倒のリスクが高いことを意識し、床の状態の確認や福祉用具の活用などの環境を整える。立ち上がりがスムーズにできる介助方法や、麻痺側に立って支えることで転倒予防になる。
さらに利用者の身体機能に合った介助方法を介護職員全員が共有できる研修が求められる。
入浴時に使う福祉用具について詳しく知りたい方は「入浴補助用具」ページをご覧ください。
プロフィール
執筆:
介護現場で介護職と介護支援専門員、教育現場(田園調布学園大学人間福祉科など)で非常勤講師を務めた。
現在は介護労働安定センター研修講師・山野美容専門学校美容福祉にて非常勤講師。