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第6回 <対応方法>解決に向けた工夫

工夫点

利用者の状態変化に気づいたら、バイタルチェックで客観的に数値化できる情報を収集する

 日ごろから全身状態を観察し、いつもと違う状態に気づいた場合、バイタルチェックなどによる客観的な数値で状態を把握することが基本です。
 医療職の立場からすると、現状を正確に簡潔に報告してほしいと考えています。
 例えば情報共有のツールとして使われているSOAPがあります。

S(subjective):
主観的な情報(本人の訴え等)

O(objective):
客観的情報(バイタルサインやパルスオキシメーターなど数値化されたもの、尿量など)

A(assessment):
評価(主観的情報と客観的情報からどう判断したのか)

P(plan):
計画(対応の内容)

 このような的確な情報を介護職員から伝えられると、早期処置や対応につながります。
 介護職員の役割として大切なことは、「測定をしてその数値を医療職員に伝える」ことです(※)。
 バイタルサインに関しては介護職員は利用者の通常時の数値をしっかり把握しておく必要があります。そのことが異常の早期発見につながります。

※「水銀体温計・電子体温計により腋下えきかで体温測定」「自動血圧計による血圧測定」「新生児以外の者であって入院治療の必要のないものに対してパルスオキシメーターを装着し動脈血酸素飽和度を測定」することは医行為ではなく介護職員も実施可能と国からの通知で定められている。

工夫点

状態変化に伴う看護職員への報告・連絡・相談を的確に行なう

 状態変化が起きた場合、介護職員は利用者の状態を適切に観察し、看護職員に緊急性の判断を仰ぐことが必要です。介護職員の情報提供の遅れによっては、利用者の生命にかかわる事態になりかねません。

 今までの経験で「これまでは大丈夫だった」は危険な判断につながります。新人のときより、業務に慣れてきたころにアクシデントを起こしやすくなります。
 たしかに夜間、早朝のオンコールは看護職員にとっても負担です。しかし遠慮は禁物です。これくらいなら大丈夫だろうと自己判断して連絡を躊躇してしまったり、あいまいな報告で利用者の正確な情報が伝わらないのは事故のもとです。看護職員が知りたい情報を的確に伝えましょう。

  • 時間(いつ)
  • 名前(だれが)
  • 場所(どこで)
  • 変化
    (どのようなことが起こったのか)
  • 対応
    (それに対してどう対応したのか)
  • 現状(対応した結果の現状)

 また、オンコールが必要なときの多くはバイタルの変化だけではなく、そのほかにも注意すべき変化があります。介護職員と看護職員が個々の利用者ごとに想定される状況(どんなときにオンコールが必要か)を共有する、医学的管理に関する勉強会により共通理解を図るなど、日ごろからコミュニケーションをとっておくことが大切です。

注意すべき変化の例

  • 意識レベル
    (呼びかけた際の反応の有無など)
  • 神経症状
    (脱力、こわばり、痺れ、かゆみなど)
  • 痛み
    (腹痛・胸痛、転倒による痛みなど)
  • 泌尿器(尿閉など)
  • 消化器系(腸閉塞など)

工夫点

ショートステイの利用者の情報を介護職員と看護職員で継続的に共有する

 利用者の自宅での情報を聞き取り、生命にかかわる身体変化の情報は介護職員と看護職員間で継続的に共有しておくことが必要となります。
 そのため、ショートステイの利用者の情報を職員全体に申し送ることはもちろん、情報共有ツールや記録等で確認することができる体制が大切となります。何度も利用している方については、身体状況に関係する情報を継続して共有できる体制を作りましょう。

 また、申し送りにもれがあったとしても、個々の職員が「利用者のフェイスシート等の情報を必ず確認する」「前回の利用から変化した情報に注目する」という基本を怠らないことで、情報伝達のミスを防ぐことができます。

 各現場で作成しているヒヤリハット報告書や事故報告書も情報共有のツールです。報告書の内容を自分ごととしてとらえ、同じ状況になった時の対応方法を考えておくことがスムーズな対応につながります。

<事例のふりかえり>

ポイント1
 利用者の状態については、バイタルチェック(客観的数値)で把握することが基本である。
 医療職が求める情報(いつ、だれが、どこで、どうなった、今の状態)を的確に伝える。
ポイント2
 看護職員との報告・連絡・相談を的確に行なう。
 介護職員と看護職員、介護職員同士で、日ごろから想定される緊急時の状況やその場合の報告方法を確認しておく。
 介護職員と看護職員は、お互いの専門性を尊重し助け合うという意識を持つ。
ポイント3
 ショートステイの利用者の情報共有を職員全体で行なう。
 自宅での医療・介護に関する情報を共通ツールや記録等で、全職員に対して共有できることが大切である。
 必要な情報をもれなく共有することで、利用者に対する安全なケアにつながる。

プロフィール

執筆:八子やこ 久美子くみこ

日本福祉教育専門学校 介護教員 国際教育特任マネージャー。
看護師として大学病院や訪問看護ステーションで11年間勤務。2008年から現在の専門学校で介護教員として勤務。

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