1.ハラスメント対策 ②実態把握と組織的対応
実態把握のための仕組みづくり
利用者・家族等からのハラスメントに対しては、その兆候がみられた時点からの把握が大切です。
これは、個別の事態がこじれるのを押しとどめるだけでなく、ハラスメントの発生そのものの防止にもつながります。防止策の精度を上げるには、多様な事象のなかから発生の要因・背景を丹念に分析することが欠かせません。
実態把握のための一般的な対応として、組織内に「相談窓口を設置する」「管理者・上司による職員の面談機会を増やす」ことがあげられます。
しかし、ハラスメントに対して職員が「つい我慢してしまう」という心理的な壁が存在するため、この壁を崩さない限り、相談窓口の設置など形だけの体制を整えても十分に機能させることは困難です。必要なのは、普段からの研修・周知も含め、窓口へ相談が確実に届くための仕組みづくりにあります。
ハラスメント防止に向けた
大まかな流れ
実態把握の現状
- 厚生労働省の調査(※)によれば、例えば、特養ホームで「(過去に)利用者からのハラスメントを受けたことがある」という職員は7割ですが、施設側で「ハラスメントの発生を把握している」という回答は5割未満にとどまります。
- 職員側の「ハラスメントを受けている」という認識と事業所・施設側の把握に2割近い差があります。
- このようにハラスメントの実態把握について事業所・施設側の体制は十分とは言えない状況があります。
ビジョンをもった体制づくり
- 「把握した後にどう対応していけばいいか」という先々のビジョンが定まっていないと、解決に向けた意思統一が十分に図れないまま、管理職・上司が一丸となって相談事案に向き合うという風土はなかなか築けません。
- 図のように、相談体制を確立する時点から「受けた相談をどう分類し、対応していくか」という大まかな道のりを描いておくことがスタートラインとして重要になります。
※「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル
」
令和4(2022)年3月改訂 株式会社三菱総合研究所(令和3年度厚生労働省老人保健健康増進等事業)
「現場の職員を守る」という
理念と体制をセットで提示する
管理者・上司等への相談に際して、職員側の心理的な壁となりがちなのが、「真摯に取り合ってもらえないのではないか」、もっと言えば「自分の方に非があると判断されてしまわないか」という点です。この壁を取り除くためには、事業所・施設として「現場の職員を守る」という理念と体制をセットで提示することが不可欠です。
ステップ1
介護現場での利用者や家族からのハラスメントが国レベルの普遍的な課題であることの認識の共有化を図り、個人で抱え込むべき問題ではないという意識を啓発します。
ステップ2
組織内に「ハラスメント対策」をつかさどる専門機関(ハラスメント対策委員会など)を設置し、事業所・施設全体の決意を示すことで、職員側の「積極的に相談する」という行動につながります。
ステップ3
組織内の研修を通じて厚労省のハラスメント対策マニュアルを活用し、具体的なハラスメントの内容を示すことで、問題となるケースを理解しやすくします。これにより、問題が生じた際に相談する思考を形成します。
実態把握を進めるための組織的対応