5.研修・OJT ④事例紹介(2)双方向のコミュニケーションを活かした研修
介護現場には事故や感染症の防止、(災害時等の)業務継続、加算取得などに関する多様なマニュアルがありますが、「マニュアルを整備したから見ておくように」と伝えるだけでは、日々の慌ただしさのなかで浸透しにくいのが現状です。
そのため、マニュアルを整備・改編した際には、周知・徹底を目的とした研修の機会を設けることが重要です。ただし、単に内容を解説するだけでは情報伝達にとどまり、効果は限定的です。
研修では、従事者が自身の実務経験を振り返り、「どのようなケースでマニュアルが適用されるか」を考え、双方向のコミュニケーションを通じて理解を深めることが求められます。
ここでは、利用者・家族からのハラスメントに対する対処マニュアル(ハラスメントの「兆候」をパターン化し、パターンごとの対処フローを作成)を例に、双方向のコミュニケーションを活かした研修について取り上げます。
この研修はハラスメント対応の専門部署(委員会)が開催することを想定しています。ハラスメントの対処マニュアルをひと通り解説した後、グループワーク(以下、GW)を行ないます。
GWに際しては各グループにひとりずつの委員会の構成員が加わり司会を務めます。
双方向のコミュニケーションを
活かした研修の進め方(その1)
かかる研修タイミング
- マニュアルを新規作成
- 新たな事例発生によるマニュアルの見直し
- 重大な事例(従事者がケガで休職に至ったなど)の発生(※)
※マニュアル見直しの前に「既存のマニュアル」の再徹底を目的として実施
マニュアル内容を説明
ついての質疑応答
その趣旨を説明
以下の点を明確に
従事者が嫌な思いをする状況は、どんな理由があれ法人として解決しなければならない。「見落とし」を探るのは、そのためである
趣旨
- 従事者個人の現場体験を発表してもらい、実際にマニュアルに落とし込みながら理解を深めてもらう
- マニュアルは完成形ではなく、見落しケースもある。その「見落とし」を探るリサーチ機会でもある
※どうしても話しづらい、話すことがないという人は話さなくてもOK
そのルールを説明
以下の点を明確に
この場は「利用者へのグチ」を言う場ではなく、広い視野での支援の一環であり、扱うのはあくまで個人情報であることを徹底
ルール
- 個人の事例発表に対して、ねぎらいや承認はしても批判はしないこと
- 事例内の利用者の人間性などに踏み込んだ人物批評はしないこと
- ここで出された事例は部外秘であり、SNS等へのアップはもちろん、現場に戻ってからプライベートで話題に出すことも厳禁とする
GW実施前のポイント
- このGWは、各自の体験のなかからハラスメントの「兆候」と思われるケースをあげて、「この場合に自分はどうすべきなのか」をマニュアルに沿いながらグループ内で発表させます。
- GWの参加者には、ハラスメントケースにおける「相談のしにくさ」と同じ心理状況(「自分の対応やケアが悪かったから」「思い過ごし・自意識過剰」)が生じやすいことに注意します。
- 参加者が遠慮なく安心して発言するために、GWを始める前に目的をきちんと表明し、GWのルールも設定しておきます。
双方向のコミュニケーションを
活かした研修の進め方(その2)
GW実施後のポイント
- 「兆候」のパターンごとに「どのような発言が出たか」を全参加者に紹介します。
そのうえで、以下の点を説明します。
①それぞれのケースにかかる早期対処が(委員会で)どのように進められるのか
②ハラスメント被害に発展するのをどのように防ぐのか
- このように、現場従事者から出てきた事例が目の前で解決フローに乗せられることで、マニュアルを自身の実務へ落とし込むことができます。
- GWは匿名ではないため参加者が「言い出しにくい」場合もありますが、実際に発言しなくても「自分も同じような体験をした」と気付くことで、各自が体験をマニュアルに落とし込む思考を育むことができます。