4.共有した情報を「リスク軽減」に活かす(2/3)
ポイント2
利用者とのコミュニケーションの
円滑化を
介護事故の多くは、サービス提供者側によるミスだけでなく、利用者本人が「リスクを自己認識できていない」ことによっても生じます。その最も顕著な例としては、認知症の人に起こるケースです。
例えば「自分の運動機能」への認識が乏しく、自立歩行が無理なのに歩き出して転倒するなどのケースがあります。認知症以外でも、自身の身体の衰えに気付かず、可動域などが十分に意識できていないことにより、自然の流れで手をつこうとし、その場所まで手が届かずに転倒事故に及んでしまうこともあります。
身体介護においては、利用者側の協力動作も必要となります。そのとき「利用者自身によるリスク認識」が十分にできていないと、たとえサービス提供者が側にいても事故の可能性が高くなります。
ですから利用者の動作介助をする際には、その都度利用者とコミュニケーションをとり、「リスクへの認識」の共有化を図ることが大切です。
このことは認知症の人に対しても言えるでしょう。仮に、認知症によって自身の状態像が十分に認識できない場合でも、穏やかな心理状態と介助者側への信頼感が維持できれば、介助に対する反発を防ぐ(協力動作と逆の力が生じるのを防ぐ)ことができます。
周囲の何かに心をとられて、介助者側が予想できない行動が生じるというリスクも減らせます。
できるだけ穏やかな声かけや、やさしいボディ・タッチによって、その都度、利用者側との「よい関係」を空間のなかで作っていくことが、事故リスクの軽減につながるわけです。
利用者との
「円滑なコミュニケーション」も
リスク軽減に
動作介助の進行
(例えば、ベッドから車椅子への移乗)
- 笑顔で向き合い、雑談などで利用者の緊張をほぐす
- これから「何の動作」をするのかについて示し、心の準備を促す
- 軽くやさしいボディタッチで、利用者の緊張をほぐす
- 「痛くないか・怖くないか」など、相手の状態を確認しながら
- 「ここまで(自力で)できた」という成功を相手に意識づける
想定外の反応・動きがあった
場合でも慌てずに
「ゆっくりでいいですよ」と相手を
安心させる言葉を欠かさずに、
相手のペースを探る
介助が完了した後で、どこに課題が
潜んでいるかを冷静に振り返る
共有した情報を「リスク軽減」に活かす