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存在そのものが価値になるのが
介護職だと思います。
【前編】

【介護福祉士/モデル】上条 百里奈(かみじょう ゆりな)さん

【介護福祉士/モデル】
上条 百里奈(かみじょう ゆりな)さん

目を輝かせながら、知的に、ときに熱く「介護」について語る上条百里奈さん。インスタグラムのフォロワーが13,000人を超える介護福祉士である。

上条さんが介護の世界を知ったのは中学生のとき。以来、施設等でボランティア活動を始め、やがて介護福祉士の資格を取得。現在は介護現場で働きながら、テレビやラジオ、講演会等で介護の魅力を発信している。

上条さんは22歳のときモデルにスカウトされた。「介護のことを情報発信したい!」との思いでモデルとしても活躍。介護をキーワードにフィールドを広げ続けている上条さんにお話しを伺った。

コロナ禍で介護現場が変わったと、感じていることはありますか?

介護は生活を支援する仕事なので、コロナでもやるべき事はやらなくてはなりませんから、多少の人数調整はあれど、あまり変わりません。外出制限など私たちと同じ制限はもちろんあります。

「やりにくいな」と思う事は表情が隠れてしまうマスク着用ですね。
介護は言語だけでなく、非言語コミュニケーションを多く使う現場です。相手の表情や瞬き、口の動きなどを表情から読み取りを行ないたいときにマスクで表情が半分隠れてしまうのは、それだけ情報量が少なくなるので大変です。

私は小規模多機能型の事業所にいますが、まだ特養にも籍があります。
その特養に、毎年3月のお誕生日に一緒にお寿司屋さんに行くご利用者のおじいちゃんがいたんです。
「今年も一緒に来られて嬉しい」と、涙を流しながらお寿司を食べてくれるおじいちゃんとの約束が、今年はコロナで中止になりました。
その方が6月に亡くなったんですよ。コロナと関係なく肺炎でした。とても残念で残念で・・・。

コロナで重症化のリスクが高いとはいっても高齢者なので、人生の最後は今日かもしれない。
そう考えると、感染予防をしっかりし、できる限りのことをしたうえで、今を大切にできるケアをしていきたいと思っています。

介護に興味をもったきっかけは?

「介護」というより、高齢者という「人」に興味をもったことが最初ですね。

中学2年生のとき、職業体験の授業がありました。小学生のときからマザーテレサとナイチンゲールに憧れていて、命を救う仕事をしたい、看護師になりたいと思っていたので、体験先は病院を志望しましたが人気があって断念。志望者が少なかった老人ホームに行き、そこではじめて介護を受けて生活をする高齢者の存在を知ったんです。

何の役にも立たない、むしろ迷惑ばかりかける私を優しく受けとめ、感謝してくれる姿に、私はこの人たちのようになりたいな、なれるのかなと憧れに似た気持ちを持ちました。
人間の最終形態みたいな感じがして、すごく新鮮でもあり、かっこよかったんです。
それが高齢者の近くにいたいと思ったきっかけかもしれません。

介護職で辛いと思ったのはどんなときですか?

介護現場には知識や技術を高めていっても自分が何も役に立てない事がたくさんあって、いくら介護の専門性を高めてもだめなんだなって思ったときはすごく辛かったですね。

介護を受けることが恥ずかしいという理由でSOSが出せず重症化してしまう方や、命を落としてしまった方、介護だけでは解決できない社会課題がたくさんあります。

加えて、「老いへの再定義」の必要性も感じています。
社会も個人も、老いていくことに対して、ネガティブすぎるのではないでしょうか。高齢者は、できることが少しずつ少なくなっていくことを経験する人生最難関の成長過程を生きていると思います。
テレビで「高齢者が多くなる大変な時代が来ます」というような番組を見ていたご利用者たちが、その夜「ごめんね、私たちみたいなのが長生きしてて」と泣いているんです。そんな思いは絶対にしてほしくありません。

介護を受けることが恥ずかしいとか、認知症になることが悪いことみたいな社会的風潮を変えて、もう少し高齢者や障がい者、すべての人の未来が生きやすい社会でありたいなと思います。

モデル業との相乗効果はありますか?

そんなに認知症って悪くない、私たちは楽しく老いていけるということを伝えたくて、モデルになりました。
両方の仕事があったからこそ、介護というものがより広く深く見えてきた気がします。

「後編」はこちら

プロフィール

上条百里奈(かみじょう ゆりな)

中学生のとき、高齢者に感銘を受け介護ボランティア活動を開始。

2009年、介護福祉士の資格を取得し、老健や特養、訪問介護を経て、現在は小規模多機能型居宅介護で現場に従事。
その傍ら、大学の非常勤講師や東京大学未来ビジョン研究センターの研究協力者をしている。
また、2011年からはモデル、ドラマの介護監修、テレビのコメンテーターなども務め、精力的に介護福祉の発信を行なっている。

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2周年特別編集号 「存在そのものが価値になるのが介護職だと思います。」

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