こうして両立!体験談遠距離介護とテレワーク
吉澤 京子さん(仮名)
ソニー株式会社勤務、50歳代

- 働き方
- テレワーク併用・フルタイム
- オフの過ごし方
- サイクリング、Femtech系の自己啓発活動
- 親族の居場所
- 遠距離(関西地方の自宅)
- 介護度
- 父・要介護4、母・要支援1




漫画:カワグチニラコ
こうして始まった!遠距離介護
1.実家の両親が共倒れ!?
現在、京都の実家にいる母(要支援1、78歳)と父(要介護4、81歳)を東京から遠距離で介護しています。もともと父が、脳梗塞と心筋梗塞により歩行困難な状態となっていて、元気だった母が父の面倒を看ていました。
ところが、ある年の秋に久しぶりに帰省した時、母の様子がおかしいことに気付きました。お昼ご飯で出てきた料理がご飯と梅干だけで、「お母さん、おかずは?」と聞いたら、「これや」と梅干を指すから、じゃあ私が何か作ろうと思い冷蔵庫を開けると食材が何も入っていませんでした。「お母さん、買い物にいってへんの?」って言ったら、「そんなん面倒くさい」と。母はすべてのことが面倒くさくて、やらなくなっていたのです。それで明らかにおかしいと思いました。
軽度の脳血管性認知症、いわゆる"まだら認知症"と診断されました。普段はほぼ普通に過ごしているのですがときどきボケる感じです。
母はもちろん父も10kgほどやせてしまっていて、このままでは両親が共倒れになると思い、突然なことですごいショックを受けました。
2.姉妹の葛藤
真っ先に神戸に住む妹に知らせました。専業主婦で関西にいる妹が主に介護をしてくれるだろうと思ったのです。すると、「親の介護は長女が担うもの」、「お姉ちゃんは、いつふたりを東京に呼び寄せるんや?」と言われました。ここで妹との価値観の違いにも遭遇しました。認知症介助士の講座で学び、本に書かれていた「引っ越すと認知症が悪化する」という医師の言葉を引用して妹を説得し、遠距離で在宅介護をすることに同意を得ていきました。
3.そうだ「地域包括」だ!
それまで病気知らずだった母には、かかりつけの医者はなく、途方に暮れて知人に相談してみました。その時はじめて「地域包括支援センター」という場所があり、そこの相談員の方が介護などの支援をしてくれることを知りました。
私は「嫁や娘や息子が介護を担うものだ」と思い込んでいたのですが、介護保険制度が20年ほど前に始まり、「家族だけで介護せず、必要に応じて介護のプロに依頼する」というのが基本なのだと知りました。職場でも「仕事と介護だけにしないワーク・ライフ・バランスで、自分の人生を大切にしよう」と言われています。親に対しては、「恩返ししたい」という思いはありますが、何年続くかわからない介護には、自分を見失わず健康に仕事や生活をしていることが前提だと思っています。
職場で・・・
1.1ヵ月仕事休んで態勢づくり
職場の上司は理解を示してくれたものの、現実的な問題として仕事の現場は回りません。同僚はとても協力的で、諸先輩方が口々におっしゃるのは「決して介護をひとりで抱え込まないこと」、「介護離職しないこと」でした。
睡眠が5時間を切るきびしい日々のなか、介護の積立休暇(有給休暇)という会社の制度があることを知り、仕事と介護を両立する体制を整える準備期間としてその制度を1ヵ月間使いました。京都の実家でご近所への挨拶回りをしつつ、自治体や民間の介護サービス、かかりつけ医を決めていきました。
2.テレワーク +
仲間のバックアップで
4月に職場復帰したものの、半年後に担当業務変更、その3ヵ月後には組織変更と変化の激しい年でした。新しい上司に「病院等からの緊急連絡の際は京都に帰らないといけない場合があり、長期で休みが必要な場合もあり得る」と相談したところ、「テレワーク(在宅勤務)」の活用を勧められました。さらにテレワークがし易いようにひとりで完結できる業務への変更、介護が大変なときに備えた人的バックアップ体制の整備と、配慮していただきました。
こうして、仕事に大きな支障はなく連続休暇が取れるという安心感が得られるようになりました。
同僚には親の介護のことを当初は伏せていたのですが、母が軽度の認知症だと医師に言われると踏ん切りがつきました。「自分は介護をしている」と同僚や友人にオープンにしたおかげで、「実は僕も介護やってるんだよ」と情報が入ってくるようになりました。仕事も介護もコミュニケーションが大切だと実感しています。
タイムマネジメントの
達人に!?
1.介護/仕事のルーチン化・
リバランス
1日24時間の使い方も工夫しました。毎日母と電話で話すことを日常のタスクとして予定に組み込むことにより、滞りなく遂行できるようにしました。
今はパソコンさえあればどこでも仕事ができるので、週に1日はテレワークをしています。通勤時間2時間が浮きますし、日中の仕事の合間にケアマネジャーさんや理学療法士さんと話をしています。
また、月に1度は実家に帰り、病院の付添い、掃除、足の爪切り等をこなしつつ、散歩や外食も楽しみながら、両親とゆったり対話ができるようになりました。
介護が始まったおかげで、「これは会社へ出社するリアル・ワーク・デイにやろう」、「これは家でのテレ・ワーク・デイにやろう」と以前より仕事の段取りが立てられるようになりました。介護は、自分の業務の棚卸しをする機会にもなるんですね。
2.プライベートも工夫して
趣味のサイクリングも、介護生活前は毎週日曜日に5、6時間走っていたリアル・サイクリングを、建物の中で音楽に合わせペダルを回すフィール・サイクル(45分間)に替えて、介護をしながらでも自分の時間を確保しています。
こんな感じでその時々の優先順位を見極めて、仕事と介護と自分の時間(趣味や学び等)を、上手くバランスをとりながら進める様にしています。