1.病院はいつまでいられる?
退院と言われても・・・

- 手術は成功したけど身体の機能はまだまだ良くならない
- 苦しくて酸素をしたままだよ・・・
- 痰が自分では出せなくて吸引してもらっているのに・・・
- お粥を食べるのがやっとだよ
- 半身マヒで自宅に戻れない・・・
- 自宅に帰っても介護してくれる家族がいない
①急性期病院は、治療が落ち着けば退院
急性期病院とは、急な症状の患者(急患)や重篤な病気や交通事故などの傷害に対して、治療や処置の対応を24時間体制で行なっている病院です。一般的には、救急車を呼ぶと搬送される病院です。
急性期病院では、治療が落ち着くと退院になります。「退院可能」と医師から伝えられると、家族は安心されるかもしれません。
しかし、治療が落ち着いても、マヒなどの障がいが残っていたり、酸素や栄養のための管が処置されている場合もあります。また、病気や入院生活における安静期間、入院による環境の変化の影響で、筋力や認知能力の低下など「身心の状態」には課題が残ることがあります。特に高齢者は回復に時間がかかります。
家族の立場でみると、とても退院ができる状態ではないと思えるかもしれませんが、急性期病院は治療をするところなので、治療が落ち着いた時点で急性期病院としての役割を終えることになります。
必要に応じて、ほかの病院に転院したり、自宅にもどって外来通院をすることになります。
②病院にも役割がある
病院は、どこも一緒だと思っていませんか?
病院は多くありますが、救急車を受け入れて、治療を行なうことができる病院は限られています。
病院内の病棟と言われる区分ごとに、厚生労働省から病院の機能が認定されています。救急車を受け入れている病院でも、認定により複数の機能がある病院もあります。
病院(病棟)の機能による区分
名称 | 主な機能、役割 |
---|---|
一般病棟 | 救急車を受け入れ、急性期の治療を行ないます。 |
回復期 病棟 |
脳血管疾患や大腿骨頸部骨折などの疾患がある患者に、集中的なリハビリを行ないます。 |
地域包括ケア病棟 | すぐに自宅に戻るのが難しい患者や在宅療養をしている患者を受け入れ、在宅復帰を支援します。 回復期病棟の対象疾患がない患者でもリハビリを行なうことができます。 |
療養病棟 | 状態が落ち着いて医療行為が必要な方を受け入れます。 |
緩和ケア病棟 | がんなどの病気でつらい症状を緩和することを目的としています。 |
専門病院 | がん治療、こどもの病院、精神科病院、感染症の病院など専門的な機能があります。 |
③入院期間の短縮の取組み
病院のベッドは限られているので、必要な入院治療が安心してできるように、常に救急車を受け入れられるように病院の機能を維持することも社会的な役割として大事になります。
そのため、治療が落ち着いた時点で退院ができるように地域の他の病院や介護保険の事業所とも協力して、それぞれの役割を果たしていく必要があります。
このような理由で、国としても入院期間の短縮や病院の役割分担(機能分化)を進めています。
- 健康保険等の医療保険が使える治療(診療報酬の対象となる治療)は決まっており、入院が必要な病名や状態も決まっています。
- 目的に応じて病院の役割が求められており、診療報酬の仕組みについても入院期間が短くなるように国が定めています。
平均入院日数(一般病床)の推移

④入院の長期化によるデメリット
参考:一般病床(病院)における
病気ごとの平均入院日数
病名 | 65~69歳 | 70~74歳 | 75~79歳 | 80~84歳 | 85~89歳 | 90歳以上 |
---|---|---|---|---|---|---|
血管性及び詳細不明の認知症 | 24.7日 | 19.6日 | 24.0日 | 43.9日 | 31.0日 | 59.0日 |
アルツハイマー病 | 22.7日 | 41.8日 | 36.7日 | 29.3日 | 72.7日 | 80.9日 |
脳梗塞 | 38.6日 | 40.9日 | 40.3日 | 46.0日 | 51.6日 | 52.5日 |
脳内出血 | 44.3日 | 42.8日 | 49.3日 | 50.4日 | 53.2日 | 66.7日 |
くも膜下出血 | 43.4日 | 45.3日 | 46.0日 | 72.8日 | 97.2日 | 40.6日 |
老衰(フレイル) | 66.0日 | - | 15.7日 | 41.2日 | 80.8日 | 35.0日 |
骨粗しょう症 | 26.6日 | 33.2日 | 33.0日 | 28.4日 | 29.0日 | 37.0日 |
大腿骨の骨折 | 37.4日 | 36.9日 | 40.1日 | 43.4日 | 50.0日 | 42.1日 |
関節リウマチ | 44.1日 | 34.6日 | 33.3日 | 37.9日 | 42.0日 | 137.9日 |
急性心筋梗塞 | 17.8日 | 20.1日 | 17.6日 | 43.0日 | 18.5日 | 20.6日 |
肺炎 | 19.2日 | 29.2日 | 23.9日 | 25.9日 | 36.0日 | 38.8日 |
2型糖尿病 | 17.1日 | 24.5日 | 21.1日 | 25.4日 | 31.1日 | 29.7日 |
新生物<腫瘍> | 15.2日 | 16.9日 | 18.3日 | 21.7日 | 21.3日 | 27.7日 |
パーキンソン病 | 52.2日 | 52.9日 | 59.5日 | 68.6日 | 84.8日 | 118.2日 |
出典:厚生労働省「患者調査」(令和2年)