5.伝わる話し方をマスターしよう
伝えるには「ハッキリ、ゆっくり、大声を出さずに話す」が基本です。
①~⑤のポイントを確認してみましょう。
①ハッキリ話す! キーワードは「言葉の"子音"を明確に」
日本語は母音が非常に強い(強勢な)言語ですから、かなり重度な難聴にならない限り、母音を聞き間違えることはありません。自然な老化現象である無自覚難聴では、母音はほとんど聞き取れるのです。
しかし子音は、周囲がちょっと騒がしかったり、早口で滑舌(かつぜつ)悪く話されたりすると、簡単に聞き取れなくなります。
ですから話をする時に、子音の発音に気を付けてあげるだけで、相手の聞き取りは格段に良くなるのです。
最初に正確に子音が聞き取れていれば、文章全体を正確に聞き取れる可能性が格段に高くなります。
さて、なんと言っているでしょう?
難聴の人の聞こえ方
難聴ではない人の聞こえ方
それでは、子音に気を付けた話し方を聞いてみましょう。
子音を意識して話した場合の難聴の人の聞こえ方
子音を意識して話した場合の難聴ではない人の聞こえ方
かなり聞きやすくなったことがわかります。
特に大切なのは、言葉の語頭(最初)の子音です。
聴覚心理学の世界では、言葉の語頭の子音を人工的に強調した音声、そして逆に語頭の子音を人工的に弱めた音声で、人間の聞き取りがどう変わるかを調査した実験データがたくさんあります。
驚いたことに、人間は、語頭の子音さえ認識できれば、その後の母音はほとんど聞こえなくても、脳の中で文章内容を推測し、文章全体をほぼ正確に理解(認識)できることが証明されているのです。(※1)(※2)
この語頭の子音を明確に発音するには、ちょっとしたコツと練習が必要です。日本人は、ハッキリ話すように言われると、どうしても母音を大きくしてしまう傾向があるからです。
※1 安武達朗,中島祥好:"準実時間子音強調システム"電子情報通信学会資料,HIP2005-94(2005).
※2 古川歩,中島祥好,上田和夫,安武達朗,藤丸翔太,本村博利:"準実時間子音強調システムの実用化に向けた研究",日本音響学会春季研究発表会講演論文集,p. 37(2012).
②発話速度が大切。ゆっくり話そう
ゆっくり話すことで相手の方に伝わりやすくなります。
さて、なんと言っているでしょう?
難聴の人の聞こえ方
難聴ではない人の聞こえ方
それでは、ゆっくり話した場合を聞いてみましょう。
発音速度を意識して話した場合の難聴の人の聞こえ方
発音速度を意識して話した場合の難聴ではない人の聞こえ方
かなり聞きやすくなったことがわかります。
③伝え方を考える。口の形を見せる
まずはすべての言葉について、口を大きくダイナミックに動かしながら話すことが基本中の基本です。
声を出さなくても、口の動きを相手に見せるだけで大まかな内容が伝わるくらいのイメージで話しましょう。
④大声を出さない
高齢者は小さい音は聞こえませんが、大きい音は若い人と同じか、若い人以上にうるさく感じます。過度な大声を出して伝わるのは「あなたが怒鳴っている」ということだけで、言葉の内容はやはり伝わりません。
⑤マスクを着用していると、声がこもることを自覚する
マスクを着用していると、口の形が相手に見えず、また、声がこもってしまいます。
しかし、①、②をしっかり行なうことで、マスク着用時の会話がかなり伝わりやすくなることが学術的に証明されています。
伝わる話し方を具体的に練習したい人は
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音声:中川典
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