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1.若い人に多い無自覚難聴

 若年層の加齢性難聴は、本人および周囲の人に難聴の自覚が無いということが問題なのです。

①加齢性難聴になるメカニズム---耳の中の毛が抜ける!?

図1 内耳に有毛細胞がある

 人間の耳の穴の奥の鼓膜のさらに奥には、渦巻き状の内耳と呼ばれる器官があります。
 この中には数万本の細胞が並んでいて、その上にはビッシリと毛が生えています(有毛細胞)。有毛細胞は、耳に入ってきた音に含まれる周波数成分を、毛の動きを利用して分析し続け、その結果を順次脳に送っています。

 私たちはそのおかげで、音の種類や一文字一文字の言葉の違いを聞き取ることができるのです。これは「聴覚の周波数分解能」と呼ばれる人間の聴覚のとても優れた機能です。

 "有毛細胞の毛"は、頭髪と同じように加齢に伴って抜けて薄くなっていきます(ただし、頭髪ほど毛量に個人差が無いと言われていて、男女差もほとんどありません)。毛が薄くなってしまうと、有毛細胞が機能しなくなりますから、結果として、周波数分解能が落ちてしまいます。

 周波数分解能が落ちてしまうと、「言葉は聞こえるのに聞き取れない」「若い人は全く気にしないような小さな騒音(例えば空調機の音)によって、言葉が聞き取れなくなる」などの症状が出始めます。

②無自覚のうちに難聴は進んでいる

図2 加齢とともに毛の本数が減っていく

 音を伝える"有毛細胞の毛"の本数は20歳がピークと言われています。つまり大部分の人は、20歳以降は毛の本数が減っていきます。
 毎日少しずつ毛の本数が減っていきますので、内耳から脳へ送られる周波数成分の情報も10年、20年、30年...をかけて徐々に減ったり、歪んだりしていきます。

 一方で人間の脳は、脳へ送られてくる周波数成分の情報が減れば、その少ない情報から耳に入ってきた言葉の内容を推測して理解しようと働きます。そのため、少しくらい聞き間違えが起きても、はじめのうちは脳がカバーしてくれるのです。
 そして数十年を経て、脳による推測ではカバーしきれない聞き間違いなどが少しずつ増えていくわけですが、それが"聞こえ"のせいだとは大部分の人は気が付きません。

 このように無自覚のうちに難聴は進んでいきます。

③加齢性難聴の4つの特徴

高い周波数が聞こえない

リクルートメント現象

周波数分解能が落ちる

時間分解能が落ちる

参考文献:「ピクルス聴覚生理学」J.O.Pickles
(訳:谷口郁雄、堀川順生、
矢島幸雄)二瓶社
「聴覚心理学概論」B.C.J Moore
(訳:大串健吾)誠信書房


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