1.加齢性難聴の4つの特徴
人は20歳を超えると徐々に聴力が低下していきます。
内耳の中には、音を伝える役割を担う数万本の毛が生えた細胞(有毛細胞)が並んでいて、耳の穴~鼓膜と伝わってきた音に反応して、この数万本の毛が揺れています。その有毛細胞の毛が加齢とともに減少することが、加齢性難聴の原因です。
出典:リットーミュージック『サウンドとオーディオ技術の基礎知識: 音楽が10倍楽しくなる!』
加齢性難聴の4つの特徴をご紹介します。
①高い周波数が聞こえない-高い音から聞こえなくなる
高齢になると高い周波数が聞こえなくなってきます。電話の呼び出し音や体温計の音などが聞こえにくくなってきます。全体にくぐもり、はっきりしない感じに聞こえてきます。
出典:(高齢社会に対応する建築の聴(音声領域)空間の設計および評価に関する研究、
平成1、2、3年度科学研究費補助金研究成果報告書、1992)
②リクルートメント現象-小さい音は聞こえにくく、大きい音はうるさく感じる
テレビドラマのセリフが聞こえないのでボリュームを上げたら、物が壊れるシーンなどで音が大きく、ビックリしてあわててボリュームを下げた。高齢者に、普通に呼びかけても反応しないので、耳元で大声で呼びかけたら、「そんな大声で言わなくても聞こえる!」と怒られてしまったなど・・・これらは全てリクルートメント現象によります。
高齢者は、小さい音は聞こえませんが、大きい音は若い人と同じか、若い人以上にうるさく感じるのです。
③周波数分解能が落ちる-ぼやけた、割れた、歪んだ音に聞こえる
音に含まれる微妙な周波数の違いが分からなくなります。これによって、言葉の違いが分かりにくくなります。会話、コミュニケーションにとって最も大きな影響がある症状です。有毛細胞の毛が全体的に薄くまばらになることが原因なため、ほぼ全員の高齢者にこの症状があります。
ただし、有毛細胞の毛は20歳をピークに数十年かけて少しずつ抜けていくため、言葉の聞き取りも、数十年かけて少しずつ落ちていきます。よって、大部分の高齢者には、自分の言葉の聞き取りが悪くなっているという自覚がありません。
④時間分解能が落ちる-早口の声は、分かりにくくなる
有毛細胞の毛が減ると、内耳から脳にいくはずの音の情報の多くが欠落してしまいます。音の情報が減ってしまうので、当然、耳に入ってきた言葉の内容を認識するのに時間がかかるようになります。
加齢による脳の機能の低下が一因になっている場合もありますが、多くは内耳の機能の低下によります。
バラエティ番組などで、若い芸人さんの早口のギャグを聞き取れず、家族が笑っているのに一緒に盛り上がれないなどは、時間分解能の低下の典型的な事例です。
監修・提供:株式会社オトデザイナーズ
[代表取締役 坂本 真一]
(2016年2月公開)
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