人材不足が慢性化する時代のリスクマネジメント
第1回 介護人材不足の現状と高まるリスク
<ポイント3>人材不足解消に向け、国が打ち出している施策
こうした現場の厳しい状況に対し、国も手をこまねいているわけではありません。介護人材不足とそこから生じるリスクの軽減に向けて、さまざまな施策を打ち出しています。
まず、他産業の従事者との処遇格差を埋めるべく、2017年度に介護報酬上の介護職員処遇改善加算の拡充を図りました。ポイントは、昇給要件の明確化を条件とした加算率の高い給付区分(新加算Ⅰ)を新設したことです。ちなみに、この新加算Ⅰの加算請求率は、2018年3月時点で67.9%に達しています。
また、政府は2017年末に閣議決定した「新しい政策パッケージ」の中で、2019年10月に予定されている消費税10%への引き上げに合わせ、その増税分を活用した「介護人材への追加的な処遇改善」を打ち出しました。具体的には、サービス事業所に10年以上勤続した介護福祉士に対する「月額平均8万円以上の処遇改善」を図ることを算定根拠として、公費1000億円(保険料財源との折半で計2000億円)程度を投入するというものです。
ただし、対象としている「勤続10年以上の介護福祉士」はあくまで算定根拠であり、実際は介護職員以外の人材の処遇改善まで視野に入れた「柔軟な運用を認める」としています。どのようなルールで報酬上の上乗せを図るかについては、現在開催中の社会保障審議会・介護給付費分科会で議論が進んでいて、2018年12月までに方針が示される予定です。
さらに、いったん仕事を離れた介護人材への再就職準備金の貸付や介護職の魅力向上をPRするイベント開催、在留資格「介護」の創設によって参入間口が広がった外国人材受入れのための環境整備など、多様な施策が展開中、あるいは予定されています。