人材不足が慢性化する時代のリスクマネジメント
第5回 限られた人材の生産性を向上させる
<ポイント1>業務分析を通じた役割分担やシフトの見直し
限られた人材の戦力化が図られたとしても、日々の業務にムリやムダがあれば、その人材の能力を100%発揮させることは困難です。常にオーバーワークのリスクがつきまとい、せっかくの人材が心身の不調をきたして休職や離職に至ってしまう可能性も高まります。
そこで必要になるのが、職員の業務効率を上げることです。「不測の事態が生じやすい介護業務で効率を上げるのは難しい」と考える人もいるでしょう。しかし、平時の業務効率を上げておけば、いざ「不測の事態」が生じたときに負担の臨界点を下げることはできます。
国は将来的な労働力不足をにらみ、介護現場の生産性向上を施策のテーマとして掲げています。その一環として、厚生労働省も「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン(2019年)」を示しました。介護に「生産性」という概念を持ち込むことに違和感を覚える人もいるでしょう。
上記のガイドラインでは、「一人でも多くの利用者に質の高いケアを届ける」という介護現場の価値を重視し、介護サービスの生産性向上を「介護の価値を高めること」と定義しています。 あくまで業務改善を目的としたものととらえればいいでしょう。
特に注目したいのは、各職員の役割分担の見直しやシフトの組み換えを図ることです。これを行なうためには、現状の役割分担やシフトを分析したうえで、手直しが必要な部分を把握しなければなりません。この分析を通じて、「現場のどこに効率の悪さが潜んでいるか」という課題を明らかにすることができます(職員の役割分担やシフトの具体的な分析方法については、図を参照してください)。
ICT(情報・通信技術)活用や介護ロボット導入についても、課題を抽出したうえで導入を図ることにより、費用対効果を最大限に高められるわけです。
例えば、実際の業務量と比較して過剰な人員が投入されていないか(ムダ)。それゆえに、手厚い業務が必要なときに人員が足りなくなっている状況はないか(ムリ)。まず、こうした部分の適正化を図ることから始めましょう。