人材不足が慢性化する時代のリスクマネジメント
第6回 外部連携の強化による人材不足のカバー
<ポイント3>地域の多様な人材をもっと活かす仕組み
介護現場の人材不足を「外部の人的資源」でカバーするというビジョンを掲げた場合、頼れる存在となるのは、(委託契約等による)外部の専門職だけではありません。頭に入れておきたいのは、利用者の生活フィールドを地域という中でとらえた場合、多様な支え手がケアの質向上に寄与することです。
グループホームや小規模多機能型など、認知症ケアに関するサービスを例にとってみましょう。こうしたサービスの現場では、利用者の生活フィールドは「地域」にある点を重視し、例えば、利用者と職員が地元の商店街に買い物に行ったり、なじみのレストランで外食したりする光景が見られます。昨今では、定期的に開催される認知症カフェに参加して、地域の多様な人々との交流を楽しんでいます。
ただし、忘れてならないのは、その地域交流が、「その人らしい生活の姿」にきちんと結びついているのかという点です。本人の主体的な意向に配慮せず、ただ「買い物、外食、認知症カフェに連れていく」というだけでは、形だけの地域交流で終わりかねません。
基本となるのは、利用者一人ひとりの生活歴(してきた生活)や普段の言動、心身の状況などをきちんと把握しつつ、「その人が大切にしている地域生活のあり方」に心を寄せることです。それをもとに、参加する先のさまざまな人々と「どんな気遣いが必要か」という点でのすり合わせを行なうことが重要です。
もちろん、(生活歴や既往歴など)個人情報保護に関する気配りは必要ですが、「ホームの利用者と一緒に買い物に訪れたいので、こんな配慮をお願いできないか」という事前に打診はしておきたいものです。こうした交流を通じて、いざ「認知症の利用者がひとりで外に出てしまった」などの場合に保護をお願いできる関係が築けます。これも、現場の人材不足感が高まる中では、大切なリスクマネジメントの一つといえるでしょう。